「Z世代×政治」の実情とは?アンケート調査から見えてきたもの
「若者の投票率が…」とか「Z世代の政治参加を…」など、さまざまな声が上がる中で、では実際Z世代は政治に対してどのような意識を抱いているのでしょうか。
若者マーケティング期間「SHIBUYA109 lab.」は、15歳~24歳のZ世代を対象に、「Z世代の政治に関する意識調査2023年版」を実施。アンケート結果から、その実情が見えてきました。
本記事ではその内容を詳しく紐解き、ご紹介します。
積極的な意思も…Z世代が投票に行く理由とは?
Q.今後の選挙への投票意向を教えてください
まずはZ世代に「今後の選挙への投票意向」を聞いたところ、40.7%が「必ず投票する」と回答。
「選挙期間の状況により投票するかを決めると思う」(31.6%)と合わせると、72.3%が投票意向有り、という結果になりました。
Q.あなたが投票に行く理由を教えてください
「投票に行く理由」を尋ねたところ、「若者の投票率を上げたいから」(44.0%)、「自分の声を政治に反映させたい・届けたいから」(38.4%)、「国民として与えられている権利を行使したいから」(33.8%)、「高齢者ばかりでなく、若者にも目を向けてほしいから」(31.5%)、「社会をよりよくしたいから」(31.1%)と続きます。
「なんとなく」や「特にない」はごく少数派となり、多くの人が何らかの意思を持って、投票を行っていることが見えてきますね。
Q.あなたは投票先をどのような基準で決めていますか
投票先の基準については「政策」(68.5%)、「人柄・印象」(33.8%)、「所属政党」(26.8%)、「活動実績」(26.5%)といった意見が続きます。
グループインタビューでは、「街頭演説が目について聞いてみることがあるが、内容を理解しきれないので、候補者の話し方や表情を見ている」「動画で公約などを話して欲しい。文面だけではわからないし、話し方を見たい」など、人物の人柄に注目して選ぶ、という声が多く挙がっていたそうです。
一方で「投票先をどうやって決めたらいいのかよくわからない」と答えている人は59.8%にものぼります。
「選挙公報で政策を見て投票に臨んだが、実績などをもっとわかりやすく書いて欲しい」といった意見も。紙面の選挙公報は、情報が細かく、特に紙面慣れしていないZ世代にとってはわかりにくいものなのかもしれません。
「いくつかの質問に答えると自分に合った政党を教えてくれる診断系サイトを使った」など、分からないなりにも、便利なサイトを利用して、自分たちなりに政治参加しようとするZ世代の様子も見受けられます。
Q.あなたはどのような政治家に親近感を覚えますか
親近感を覚える政治家としては、「理念や政策に共感できる」(25.8%)や「年齢が自分と近い(若い)」(22.5%)、「テレビでよく見る」(22.2%)など続く一方で「特になし」が29.9%と、3割の人は「特に政治家に親近感は抱かない…」という感想を持っていることが分かります。
ただ、グループインタビューでは「若者を意識した政策を掲げている人を見ると気になる」「地に足の着いた政策を言っている人は信頼できる」などの声も上がっていて、考え方が共感できる相手、というのを見つければ、親近感を抱くZ世代も多いようです。
Z世代の投票意識が高い一方で 、「自分が投票に行っても社会は変わらない気がする」が63.6%、「誰が政治家になっても社会は変わらない気がする」が49.8%と、多くのZ世代が政治や世の中に関して「どうせ変わらない」と諦めモードであることもわかります。
実際にグループインタビューでも、「友だちに『選挙に行ってもどうせ変わらないよ』と言われてしまった」などの声がありました。
Z世代が思う現代の政治課題とは?
Q.あなたが政治に関して興味があることを教えてください
続いて、Z世代が政治に関して興味のあることのご紹介です。
昨年は「新型コロナウイルス・感染症対策」が1位だった政治関心。今年は「税制度」(28.7%)「年金問題」(26.3%)「教育支援」(26.3%)「子育て支援」(25.4%)「女性の活躍」(21.3%)と続きました。
昨年のものと比較してみると、医療関連の項目が下がり、お金や教育に関する項目の順位が上がっています。
しかし、政治に関して、「日本の政治に期待している」に「そう思わない」と回答したのは71.8%、「日本の政治に不安を覚える」と回答したのは81.3%、「日本の政治が変わってほしいと思う」と回答したのは77.7%という結果が出ています。
ここでも、現状を不安視すると同時に、政治への「諦め(=期待していない)」が感じられます。
Q.今後、政治の仕組みとしてあったらいいと思うことを教えてください
政治の仕組みとしてあったらいいと思うことに関しては、「オンラインで投票できるようになる(インターネット投票)」(55.5%)「若手議員の増加」(35.4%)「女性議員の増加」(28.7%)との意見が続きます。
「選挙に行かなきゃと思うけど、会場に行くのが手間だし、仕事で行けない人もいそう」「大学生は住民票が実家になっていて、実家に戻って選挙に行かなきゃいけない人もいるので面倒な人もいるのでは」という率直な意見も聞かれました。
一方で「スマホで投票可能になると顔だけで選ぶなど適当に選んでしまいそう。通っている学校や会社など(アクセスのいい場所)でやってほしい」などの冷静な声も挙がっています。
利便性の高いスマホでの投票は、投票率は確実に上がりそうだと思う反面、まだまだ課題も多そうです。
今後の選挙への要望にまつわる調査では「同世代の政治家が増えてほしい」は68.4%、「被選挙権の年齢が引き下がってほしい」は37.3%となっています。
「議員の年齢ごとの比率を新たに考えたほうがいいと思う。20代は経験が浅いという意見もあるだろうが、20代だからこそ見えている世界がある」という声や、「50代以上の人たちとのジェネレーションギャップは絶対にある。被選挙権年齢を引き下げるべき」など、若い世代の声を取り入れるべき、との声が多く挙がりました。
Z世代の政治との関わり方とは
Q.政治に関してあなたにあてはまる考えをそれぞれ教えてください
情報収集・情報発信について聞いたところ、「SNSで自然と政治に関連する情報に触れることが多い」(とても当てはまる・やや当てはまるの合算で37.8%)という回答になりました。
うち「選挙は必ず投票する」と答えた層に関しては55.9%と高い数値になっており、投票意向が高い層はSNSでも政治に関する情報への接触頻度が高いことがわかります。
「日本の政治を積極的に変えていきたいと思う」という質問に「そう思う」と回答したのは54.5%と半数以上になったものの、「将来は政治家になりたいと思う」という回答は15.8%に留まっています。
「企業からの働きかけでも政治を変えられると思うので、企業人として声を挙げたい。将来所属する企業で社会問題に関する活動があれば参加する」という、企業側から世の中を変えようと思う声や「政治家にはならない。結局政治家になっても、世の中は変えられないと思う」など、政治家への低い期待値を感じさせる意見など、さまざまな声が挙がっています。
“文字”から見る政治のイメージと今後の展望
Q.日本の政治家に対するイメージを教えてください
最後にこんな調査結果です。これはユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析で「日本の政治家に対するイメージ」を自由回答してもらった中から、頻出語や特徴語を分析したものです。
「日本の政治家に対するイメージ」について、「堅苦しい」や「堅い」「高齢」などが目につきますね。「汚職」や「居眠り」など、不名誉なイメージも散見されます。
Q.あなたは日本の政治が今後どのようになって欲しいですか
一方で「今後の政治に期待するもの」としては、「若者」という言葉が一番目につき、「寄り添う」「取り入れる」「クリーン」などの言葉も目立ちます。
また「学びやすい」「生きやすい」「暮らしやすい」など、自分たちの生活がよりよいものになるような、前向きなワードが多く挙がっているのがわかります。
よりZ世代の政治参加を促すために
SHIBUYA109 lab.所長は調査結果内で、「投票意向は高いものの、実際の行動になかなか繋がっていない要因として、一つは、政治家の属性が偏っていることから、身近に感じられないということ。もう一つは、若者が政治を自分ごとに感じられる情報が少ないことが考えられます」と分析。
さまざまな年代や性別の人が参加しやすい政治づくりとともに、政治側からの能動的な情報共有が必要不可欠だ、と述べています。
興味関心がないから投票に行かないわけではなく、自分ごとと思いにくい上、システム上投票がしにくいから「投票できない」人も多いZ世代。
一連の調査を通じ、「政治に参加したい」と思うZ世代が案外多いという印象を受けたのではないでしょうか。
そんなZ世代を政治に巻き込み、若い意見をたくさん取り入れていくためにも、政治側や企業からの働きかけや、投票をしやすくするための工夫がもっと必要になるのかもしれませんね。
【調査概要】
「Z世代の政治に関する意識調査2023年版」
・WEB調査
調査期間:2023年5月
調査対象:一都三県に住む18~24歳の男女(大学生・短大生・専門学校生)
回答者数:418名(男性200名、女性218名)
調査方法:外部のアンケートパネルによるインターネット調査
・SHIBUYA109 lab.による定性調査
調査対象:男子学生3名、女子学生4名 2G 計7名
調査方法:グループインタビュー
調査主体:いずれもSHIBUYA109 lab.調べ