推しは大分県の「鉄輪(かんなわ)温泉」!「HAA」代表・池田佳乃子さんの温泉ライフ

あなたの「推し」はなんですか? それは、人物であったり、ブランドであったり、食べ物であったり、はたまた概念であったりと、多岐に渡るかもしれません。
入浴剤「HAA for bath」の企画・販売を行う株式会社HAAの代表・池田佳乃子さんは、温泉が好きすぎて入浴剤を作ってしまうほどの「温泉推し」。4年ほど前から、東京と大分・別府の2拠点生活をしています。
温泉の話になると、かなりマニアックなレベルの話が止まらなくなる、まさに温泉マニアな池田さん。ちょうど温泉が恋しくなる季節に、推しの温泉と、効果的な入り方、そして自身が作った入浴剤「HAA for bath」について、たっぷりと話を聞きました!
自分に合う泉質を見つけると温泉巡りがさらに楽しく♡

「温泉にもパーソナライズがあって、自分に合った泉質を見つけると温泉巡りが楽しくなりますよ」と語る池田さん。
好きな温泉地や温泉旅館はあっても、なかなか泉質で温泉を考えることってないのでは? 池田さんは美容にいいからという理由で温泉にハマったそうですが、それはまず泉質を知ってこそなんです!
「泉質は世界に10種類あると言われていて、地域ごとに地質や土壌などで変わるんですが、別府には7種類もの泉質の温泉があるんです! 狭いエリアにそんなにたくさんの泉質があるのはレアなんですよ。長く逗留して、自分に合う泉質を探るには、別府は最適な場所なんです」(池田さん)

肌に合う泉質を見つけることで、得られる美容効果も変わってくるというわけですね。
「夏に日焼けしたときは、メラニンの分解を促す作用がある硫黄泉。肌がくすむ、ごわつくときは、角質や毛穴の汚れをとる効果がある炭酸水素塩泉。冷え性なら、豊富な塩分がベールになって保温効果が高まる塩化ナトリウム物泉。
そんなふうに、肌質や体調に合う泉質があるので、詳しい人に聞いたり、宿のHPに書いてある泉質を見たりして選んでみるといいと思います。
ただ、肌が弱い方には刺激が強すぎることもあるので、そういう方には単純泉がおすすめ。硫黄泉がシングルオリジンだとしたら、単純泉はいろいろな成分がバランスよく混ざっているブレンドコーヒーみたいな感じです。でも、ひとことで単純泉といってもブレンドの割合などが違うので、『ここの単純泉がいい』っていうところが必ず見つかると思いますよ」(池田さん)

まだまだ止まらない池田さんの温泉トーク。泉質はもちろん、入り方にもポイントがあるそうです!
「『二湯巡り』といって、違う泉質のお湯ふたつに入るのがおすすめです。炭酸水素塩泉で角質をとって、塩化ナトリウム物泉で保湿・保温をするとか。化粧水と乳液みたいなイメージですね。
例えば由布院と別府の間にある塚原温泉は、日本に2番目に酸が強い温泉で、レモンよりpH値が低いので、入ると肌がむき卵みたいになります(笑)。
肌が弱い人にはおすすめしないですが、私は肌のごわつきがヤバい!みたいなときはここに駆け込んでいます。ただ、そういう温泉は保湿しないと乾燥しやすくなるので、必ずその後保湿効果の高い温泉に入るか、保湿ケアをします。
温泉に入ったら肌が潤うイメージがありますけど、実は泉質によって違うんですよ」(池田さん)

また、別府は源泉の温度が95℃近くあるので、10分くらいサクッと入るだけでも交感神経がONになり、頭もすっきり。昼間、シャキッと仕事をしたいときにはいいけれど、眠ったりリラックスしたいときは副交感神経がONになるよう、ぬるめの温泉に浸かるのがいいそう。
「新潟の栃尾又温泉に、すごく好きな『自在館』という湯治宿があるんですけど、そこのラジウム泉は36度なんです。4時間くらい本を持って入って長湯しています(笑)」(池田さん)
泉質だけでなく、源泉の温度も温泉地によって違って、低いところもあれば高いところもあるので、季節によって選んでもよさそうです。
お風呂感覚で温泉に入れる別府の魅力

別府生まれの池田さん、生粋の温泉マニアなのかと思いきや、これほど温泉に詳しくなったのは30歳で東京と大分の2拠点生活を始めてからなのだそう。
「100湯以上の温泉がある別府で、88湯の温泉を巡ったら『温泉名人』の称号をもらえるスタンプラリーがあるんですが、母がその温泉名人になりまして。母も元々詳しかったわけではなく、移住者のお友達に誘われて巡り始めて、ハマったんです。
私も高校までは別府にいたけど、住んでいたら意外と巡らないんですよ(笑)。祖母の家にも温泉があったし、お風呂感覚で温泉に入っていました。
詳しいのは外から来た人で、地元にいる人は家が温泉という人がほとんど。マンションに大浴場がついていたり、一軒家に温泉があったりと、外にわざわざ入りに行く感覚がないんです」(池田さん)

別府は日常に温泉が溶け込んでいる文化なんですね。
「¥100で入れる温泉が100か所以上あって、1年間¥2,000くらいで入り放題の共同浴場もあるし、特別なものじゃなくて家のお風呂みたいな感じでみんな入っています。
近所の人たちがここで『最近どう?』みたいな話をしていて。裸の付き合いだから、ここでは肩書きとか関係ないんです。みんなそのままの自分として対話できるから、バイアスがかからないというか、フラットですごく居心地がいいです。そんなふうに受け入れる土壌がある地域だから、移住者の方も多いですね」(池田さん)
おすすめの湯治宿は「柳屋」さん!湯治客には東京からの若い女性も

池田さんが住んでいる鉄輪温泉エリアには、モダンな湯治宿も増えているそう。
「湯治宿は、宿の形態も長期滞在しやすいようになっていて、部屋のほかに自炊室っていうキッチンがあるんですよ。自分たちで食材を買ってきて、地獄釜(温泉から噴出する蒸気熱を利用した加熱調理装置)で野菜を蒸したり。蒸気に塩分が入っているから、うまみが凝縮されてすごくおいしいんです。
しかも1泊¥5,000もあれば泊まれるので、滞在費が高くないんです。1週間連泊プランのような長期滞在に優しいプランもあります。コワーキングスペースもあるし、Wi-Fi完備でワーケーションにも最適。デトックスしてゆったりしながら、でも企画を考えたりとか仕事もしやすくて、温泉もふらっと入れるなんて、最高じゃないですか?(笑)
おすすめは『柳屋』さん。もともとあった湯治宿をリノベーションしているんですが、モダンでおしゃれな雰囲気ですよ」(池田さん)

お話を聞いていたら、今すぐ別府の湯治宿に泊まりたくなってきました……!
「HAAのSNSを大学生の子たちと運営しているんですが、先日、彼女たちが湯治体験をしにきてくれました。大学生もオンライン授業続きでストレスを感じていたようで、とても癒やされていましたね。
鉄輪温泉の湯治宿は最近、心と体のデトックスをする場所として若い女性にも受け入れられている印象です。保湿保温効果が高い泉質なので美容にもいいし、冷え性にもいいし。
今はコロナ禍でストレスがたまりやすくなっていて、どうを心ほぐすかっていうことがみんなの課題ですよね。そんなとき、湯治ってすごくいい養生の仕方だと思います」(池田さん)
東京でもリフレッシュできるようにと作った「HAA for bath」

ストレスの多い現代人にこそ湯治が必要だと語る池田さん。入浴剤「HAA for bath」を作ったのは、単に温泉愛が高じた結果というだけではありません。
「私は東京にも住んでいるので、別府に湯治に来た若い女性客の方と仲よくなって、東京でもお茶したりする機会があるんですね。
そうすると、『あのときはリフレッシュできて整ったけど、戻ってきたらやっぱり日常に浸食されてます』という声が多くて。
私もそれはすごくわかるんですよ。2拠点生活をする中で、やっと自分のちょうどいいリズムが習得できつつあるんですが……。
東京でのライフスタイルの中に湯治=深呼吸する時間をどうしたら増やせるかがカギになってくるんじゃないかなって。それがHAAを立ち上げようと思ったきっかけです」(池田さん)

別府の湯治を東京でも体験できるようにと作った「HAA for bath」。一番の推しポイントは、「湯の花エキス」を使っていることだそう。
「江戸時代から続く、重要無形文化財になっている作り方で作られた温泉の結晶を使っています。この温泉の結晶に別府の温泉水を混ぜ、1か月かけて精製したものが、湯の花エキスです。湯の花エキスは、温泉のミネラルがとても豊富なんですよ。
弱アルカリ性で無香料なので、赤ちゃんからご高齢の方まで入れる湯質になっていると思います。
買った方からの反響をもらうことも多くて、『肌がツルツルになった気がする』とか『冷え性だけどポカポカが続いてよかった』などの声をいただきます。
ちゃんと期待される効能を感じてくださっている方がいるのはうれしいですね」(池田さん)
今後はさまざまなシーンに寄り添うプロダクトを展開したい

湯治のように長く日常的に寄り添える商品にしたかったという池田さん。今後、入浴剤以外の展開も考えているそう。
「湯治をHAAとして考えたときに、『入浴』と『休息』と『食事』と『睡眠』という4つの要素があるな、と思いました。
湯治をすると、温泉に入り、お茶や白湯などを飲み、体に優しいものを食べて、よく寝て……と、シンプルに自分の五感を感じながら自然にその4つをできているんです。
なので、その湯治として重要な4つの要素を作っていきたい。今回は『HAA for bath』ですが、『HAA for food』や『HAA for rest』、『HAA for sleep』とか。4つの要素で、深呼吸できる商品を作りたいんです。湯治というカルチャーがHAAで体現できたらいいなと思っています。
それも、日本の素材とか伝統を取り入れたものを作りたいんです。今回は別府の湯の花を使いましたが、今後は和紙とか、日本ならではの食材かもしれない。今、ちょっとずつ全国のいろいろな地域に出向いて探しているところです」(池田さん)
泉質を調べてレッツ温泉巡り!行けないときは「HAA」で休息を♡

日本人はもちろん、湯治という文化を海外にも知ってもらいたい、と語る池田さん。温泉推しの夢は広がります♡
寒くて、温泉に入りたくなる季節。どこの温泉に行こうかな?と迷ったときは、ぜひ泉質を調べて、自分の肌質や体質に合いそうなところを探してみてくださいね。きっと、もっと温泉巡りが楽しくなるはず!
時間がなくてなかなか温泉に行けないときは、入浴剤「HAA for bath」を入れたお風呂で、深呼吸する時間を作ってみて♡