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韓国発セレクトショップ「ALAND」人気の秘訣は「親近感」と「自分好みに選べる」ことにあった!

韓国発セレクトショップの「ALAND(エーランド)」は2020年10月に東京・渋谷にショップをオープン以来、20代の男女に高い支持を集め、オンラインショップ盛り上がっています。その人気の秘訣を、ファッションジャーナリスト・宮田理江さんが解説します。

更新 2021.11.10 公開日 2021.11.13
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Z世代の気持ちに寄り添う服、韓国発「ALAND」の魅力を探ります

韓国ファッションが10~20代の「Z世代」に人気です。日本では韓国発セレクトショップの「ALAND(エーランド)」が2020年10月に東京・渋谷にショップをオープン。日本上陸1周年を迎え、オンラインショップも盛り上がっています。

韓国の気鋭デザイナーに特化したセレクトショップとして、韓国でスタートしたALAND。他では見ないようなユニークなアイテムを若者が買いやすい価格で揃えているところでも「他人とかぶりたくない」「古着好き」のおしゃれ層に受けているようですね。ウエアだけでなく小物やコスメ、雑貨、インテリアと展開アイテムが幅広く、自分好みにアレンジしやすいというところも人気の秘訣かもしれません。

人気が集まる理由の一つに、発信力の高さがあります。Z世代の気持ちに寄り添うようなアイテムや着こなしを提案。Z世代が親近感を持つようなおしゃれリーダーを起用して、リアルにアイテムの魅力を伝えてくれるから、親しみがわきます。ショップスタッフの着こなしも個性豊かです。

たとえば、日本上陸1周年アニバーサリーキャンペーンではアンバサダーにモデル・タレントの姉弟インフルエンサー「よしミチ」を起用。秋の新作を2人が着こなしました。よしあきさんはブルーのニットベストをチェック柄シャツに重ねて。ミチさんはトップス、カーディガン、スカートを全てニットで揃えた「ニットonニット」でコーディネート。2人ともさりげなくトレンドを投入したスタイリングを披露しています。

SNSを使った発信が得意なのも、「ALAND」の強みです。ビジュアルやムービーなどのコンテンツも公開。「上から目線」ではない、着る人の自由なアレンジを応援するような立ち位置から、自分らしい着こなしに導いてくれます。ショップにはSNSに自撮り写真をアップしやすいフォトスポットも用意。SNSでほかの人のスタイリングも参考にできます。では、実際に秋新作のルックを通して、アイテムやコーディネートの魅力を探っていきましょう。

◆ミニスカートは「アンチ・ガーリー」に仕上げる

スタイリングの鮮度が高いのは、「ALAND」の強みです。トレンド感の高い装いが若々しいリアルクローズとしてアレンジされ、共感を呼んでいるようです。久々にカムバックを果たしたミニスカートは甘くなりすぎない「アンチ・ガーリー」の着こなしがポイントです。

こちらはジャケットとミニスカートのセットアップ。ミニ丈のセットアップは2022年春夏向けにモード界でもあちこちから提案されているアイテムですが、「ALAND」では一足先に打ち出しました。ブラウスの大襟を、ジャケットの上にあふれさせて、キュートとエレガンスが同居するたたずまいに。大きい襟のおかげで小顔効果も発揮。

そこに、コンバット系のゴツめブーツを迎えて、足元にボリュームをつくるのが今年らしいアレンジ。レッグラインをスマートに見せられる仕掛けです。強さとレトロガールのミックスコーディネートに仕上がりました。

ショート丈ジャケットは軽快な印象を生む点で、ポジティブな雰囲気の着こなしに役立つアウターです。人気上昇中のミニスカートと組み合わせれば、コンパクト感が際立つコーデに。ジャケットのボクシーなシルエットがミニスカートを逆に引き締めてくれます。

キーアイテムのショート丈ジャケットとチェック柄ミニスカートを、バケットハットとスニーカーで挟んだスタイリング。アウトドアやストリートの気分を上下から加えて、ムードをずらすのがコツ。このような「型にはまらないアレンジ」は今のおしゃれの基本技に。オーバーサイズのキルティングジャケットは着丈が短めで、ありそうでなかった意外な見え具合。

ジャケットの袖を折り返したのも効いています。懐かしげなムードが漂うコーデュロイのハットでヴィンテージ感をプラスする新スタイリングにも注目です。

◆上品系アイテムに「クールにずれ感」を投入

「ALAND」の人気が高いのは、スタイリング提案が着る人の気持ちに寄り添っているから。シャツやブラウスといった、おなじみのアイテムからも、別の表情を引き出してみせます。何通りにも着こなせそうだから、ワードローブに迎え入れたくなるわけです。

とろみを感じさせる上品なシャツを、あえてカーディガンのように前を開けてイージーに着こなしています。気取らないラフなムードは、気負った見え具合を好まないZ世代に支持されやすそう。ミニ丈ワンピースに重ねて、素材や着丈の「ずれ感」を印象づけています。足元はボリュームブーツで今年らしさをミックス。シャツ、ワンピ、靴のそれぞれでテイストを変え、まとまりすぎを避ける「はずし」のテクニックです。

その服が持つ固定的なイメージを、少しずらすだけで、着映えが様変わり。自分好みの装いに整えやすくなります。もともとのイメージがはっきりしているほど、「ずらし」の効果がアップ。ずらし方にオリジナルのアイデアを盛り込むことによって、オンリーワンのスタイリングが生まれるわけです。

エレガントな印象のボウタイ(リボン)は、ブラウスでもワンピースでも、レディーライクな雰囲気を演出できるから、1枚迎え入れておくと便利なアイテム。上品にまとめたい日はそのままで構わないのですが、ムードを変えたい場合は足元の一工夫が効果的です。こちらはあえてソックスをチョイス。ゆるっとした印象がリラックス感を呼び込みました。さらに、ローファーでマニッシュ感とクラシカル風味を投入。気品を保ちつつ、ソックスで堅苦しさを和らげています。

◆オーバーサイズが鍵に。「ジェンダーレス」でリンクコーデ

最近の最強トレンドと言えそうなのは、性別にとらわれない「ジェンダーレス」です。ジャストフィットより大きめの「オーバーサイズ」は、体の線を拾わないから、気持ちも体もリラックスしながらクールに着こなせます。

オーバーサイズのスウエットパーカはゆったりフォルムが着心地よさげ。たっぷりした量感が着やせ効果まで引き出してくれます。正面のビッグプリントにファニー感やメッセージ性があり、着る人のキャラクターも印象づけてくれそう。厚底スニーカーで足元にボリュームを出すのがお約束の合わせ方。

メンズはスウェットシャツにホワイトパンツで近い雰囲気に。全くのペアルックではないけれど、ムードや質感や着こなしに共通点を持たせた「うっすらリンクコーデ」。くっつきすぎない間柄もうかがえそうなナイスチョイスです。

◆韓国ならではの「ポップ感やストリート気分、カルチャーミックス」に注目

「ALAND」はセレクトショップだから、何種類ものブランドがそろっている点も、多くの人を呼び込む理由です。各ブランドのテイストを程よく散らしてあるので、自分好みのブランドを見付けやすくなっています。

韓国ファッションの持ち味になっているポップ感やストリート気分、カルチャーミックスも魅力。ユニセックスのアイテムがそろうところは多様性が求められる今の時代にマッチしています。

グローバルに関心を集める韓国ファッションをうまく取り入れれば、今の時代の空気感まで引き出せそう。トレンドとして新浮上してきたミニボトムスや、エレガント寄りアイテムをはずすテクニック、こなれた感じのジェンダーレスコーデなどが自分流のアレンジに生かしやすく提案されています。

時代の先を読む韓国ファッションをウォッチし続けることによって、新たなトレンドを発見できそうですね!

ファッションジャーナリスト:宮田理江さん

Profile:10を超えるメディアで連載を持つファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。新聞からSNSまで多彩なメディアを通じて海外・国内コレクションのリポートや最新トレンドの紹介などを発信。次シーズンのファッション予測、着こなしテクニックの解説、おしゃれ市場の動向分析、ファッション関連ニュースの執筆、映画のファッション読み解きなどを多面的に手掛けている。著書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(ともに学研パブリッシング刊)は、中国、台湾、タイでも翻訳発売されている。

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