アフレコ中はずっと“大丈夫かな?”と不安になっていました
ーー今回、バービーの吹き替えをされた高畑さん。約8年ぶりの吹き替えでかなり緊張されていたようですが、収録現場ではどう過ごされていましたか?
基本、ブースにひとりでの収録だったので不安すぎて、スタッフの方に「大丈夫ですか?」って、ずっと聞いていました。最後まで収録してあと、前半が不安になってきて、ちょっと聞かせてもらってやり直しさせてもらった部分もあったり。セリフの分量が結構あったので、もっとこういう音が出たらいいのになと思いながらやっていました。
ーー吹き替え版の演出家さんからは、何かアドバイスをもらったりも?
口のスピードに動画のスピードが合わないときや、長いセリフなど、私が慣れてないところが出てくると、「もう一回やりましょうか」とか、「もうちょっとテンション上げてみましょうか」「もう少しウィスパーめで」ということを教えてもらいながらやってました。
逆に感情的なところは、サラッと1回とかでいっちゃったこともあって。本当に私、今ので大丈夫かな?と思ってました(笑)。
ーー吹き替えへの不安はどう乗り越えたのですか?
吹き替えって、独特だし、声優さんのお仕事という印象があるので、普段生身でお芝居している私にとっては、多分もっとハイテンションでちょうどいいぐらいに聞こえるのかなって思っています。
ものすごく技術がいるんですけど、その技術が私にはないから、どうすればいいんだろう……と考えて、いろいろな吹き替えの作品を観てみたり、(バービー役の)マーゴット・ロビーのほかの作品を観てみたりしつつ。
“バービーはどんな感情になったりするのかな?”と想像して寄り添ってあげられたらいいなと思ったので、探り探りでやっていましたね。あと、ケン役・武内駿輔さんの吹き替えの声が先に入っていたので、少し聴かせていたたりもしました。本当に探り探りで難しかったです。
録音ブースでひとり絶叫したこともありました(笑)
ーーアフレコで特に苦労したシーンは?
「Hi! Ken」というセリフがすごく多いんですけど、「Hi!」と英語の発音っぽくすると、ケンも「Ken」の発音になっちゃって。でも、「“健康”の“健”みたいなイメージで、日本語っぽくしゃべってください」と監督に言われたんです。その発音に苦労して、何度もやり直しました。「Hi!」がつくと、英語のニュアンスに勝手になっちゃって。「Ken」になっちゃうんですよね(笑)。最初につまずいたところはそこですね。
あと、バービーが最初は完璧な世界に生きていて、ハイテンションで、“みんなハッピー!”って感じだったのに、だんだん人間っぽくなってきて、感情にディテールが出てくるので、その変わっていく様みたいなものを、声でどうやって表現したらいいんだろう……とすごく悩んで、相談しながらやっていました。
ーー逆に、一番テンションが上がったシーンはありますか?
ナイトパーティーのシーンです。
とにかく毎晩パーティーをやってて、バービーたちが絶叫していたりするので、録音ブースでひとり絶叫していました(笑)。なかなか普段ならないテンションだったので、すごく気分が上がりましたね。
洋服がどれも可愛い♡ファッション好きにはたまらない映画です!
ーーピンクづくしの可愛い衣装ばかりが登場していましたね!
印象に残った衣装は、カウガールみたいな服装。可愛くて、めちゃくちゃ好きです。人間界に行ったバービーとケンは、最初はすごく派手なローラースケートルックで目立ちすぎていたので着替えた服装なんですけど、それがカウガールの服装。それも目立つから着替えた意味があるのかないのかみたいな感じも含めて(笑)。
でも、映画に登場する服装は全部が可愛かったので、ファッション好きには、たまらない映画だと思います。
私も、バービーに影響されて、最近はずっとピンクを取り入れてた服装をしています(笑)。今日の衣装もピンクですし、カウガールスタイルが好きだったので、ウエスタンブーツを選んで履きました!
マーメイドバービーに会ってみたい!自分がなるなら、バストをボリュームアップできるバービー♡
ーーバービーランドもすごく可愛い世界でしたよね。これを作るために世界中からピンクの塗料不足になったとか!? このバービーランドに、もし行けるとしたらどう過ごしたい?
ビーチに行って、マーメイドのバービーに会いたい。メンズの人魚にも!
あと、バービーの世界なので、固体のかたい波で、それを見てみたいな。砂とかも飛び散らなくてよさそうです(笑)。
ーーそのマーメイドバービーをはじめ、劇中では、さまざまなバービーが出てきますが、高畑さんならどんなバービーになってみたいですか?
おっぱいが大きくなるバービー!
胸にふわっとボリュームがほしいときは空気で膨らまして、カッコいい洋服はボリュームがない方が似合うからへこまして……。そんな自由自在に大きさが変えられたり、調整できたら最高ですよね(笑)。
ーー映画のバービーランドは、飲み物の液体やシャワーの水が出てこない。不思議なパラレルワールドみたいでした。
自分たちが小さいときにバービーで遊んでいたのは、そういう状況ですよね。
「(コップを持たせて)はい、飲んでる」、「家の二階から手で建物の下にすぐに降ろして)はい、出かけよう」みたいな感じ。
これが現実になると、こんなに異様に見えるんだと思いました(笑)。でも、バービーランドは、すごく可愛くておもしろい世界でしたね。
ーー高畑さん自身が今起こってほしいファンタジーなことって?
国民的マンガに出てくる、どこにでもすぐ行けるドアが使えるようになりたい!
すごく海外旅行が好きなんですけど、フライト時間が長すぎるなといつも思っていて。なので、どこでもドアがあったら、パッと海外へ行きたいです。「2日空いたんで、ちょっと海外行ってきます」って感じで(笑)。今ならヨーロッパに行きたいですね。
肌荒れしたときは、異変を感じて自分をいたわります!
ーーバービーランドでは、いつもヒールを履いていて、つねに上がったままのかかと。そのかかとが地面につくことで、バービー自身が異変を感じますが、高畑さんは自分に何が起きたら“異変”だと察知しますか?
肌が荒れたとき(笑)。結構肌は強い方なので、肌が荒れるときは、何か自分の知らないストレスがあるのかな、と思いますね。きっと胃腸も弱っているから、ごはんを見直して、いたわらなきゃって思います。あと、鍼をして調子を整えます。
ーーバービーのセリフで心に響いた言葉は?
「あなた、変わったわね」と言われて、「今の私は完璧じゃないから」って返す言葉。ディテールはちょっと違うんですけど、そういうセリフが響きました。
自分自身が10代のときって、結構自信にあふれていて、ざっくりと完璧だと思っていたんです。だけど、それが大人になるにつれて、自分が苦手なことや、好きじゃないところがどんどん出てきて崩れ出したときに、ものすごく動揺した記憶があって。
でも、そういう時期に、「ダメなとこがいいね」って言ってくれる人が周りに出て来たときに、今の自分のほうが好きだなって私自身も思えて。だから、自分の世界がどんどん崩れていく感じみたいなところは共感というか、誰もが経験するところなのかな。10代って無敵だったけど、崩れてからの人生もすごくおもしろいなって。バービーの人生が始まっていく感じが、観ているみなさん、ちょっと身につまされる思いをするのかなって思います。
完璧って実はおもしろくないかも(笑)
ーー高畑さんは、女優としてさまざまな役をこなされてきていますが、演じるにあたり、完璧さは大事にされていますか?
私自身、完璧を求めたことがなくて。というのも、小さいときから舞台に立っていた時間が長かったので、毎日すごく違うんです。お客さんのテンションも、共演者の方との息の合い方も、日によって全然違う。だから、完璧にやりたいと思っても、そうなることってないんです。逆に、みんなが自由にやった結果、100点じゃなくて120点が出きちゃったみたいな日もあったり。
なので、完璧にやろうと思ったことはないし、完璧にはできないです。だけど、一緒にやる人たちのことを完璧に信頼してやりたいっていう思いはあります。周りの人によって、どこまでも上げてもらえるんです。
それに……完璧ってあまりおもしろくないと思うんですよね(笑)。
映画では、バービーの世界は完璧である美しさ、様式美みたいなものもすごくあるなと思うので、完璧な世界も、そうじゃない世界も、どっちも感じられるのがすごく魅力だと思います。
”個”を見い出すことに勇気がもらえます
ーーバービーランドと人間の世界、2つを経験したバービーは、最初よりもどのように成長したと思いますか?
映画のバービーは、まだ生まれたての赤ちゃんのような感じがしています。今後、いかようにでも変わっていくんだろうな。
完璧ではない人間の世界で、完璧でないことの楽しさとか素晴らしさを感じる反面、完璧なバービーランドが恋しくなる瞬間もあるのかなと。
でも、私は絶対完璧じゃないほうがおもしろいと思います。ただ、人間くさいとバービーじゃないですよね……(笑)。不思議な世界線だなと思います。
でも、バービーは、何をしていてもチャーミングだからいいのかな?(笑)
それから、バービーランドは女性優位の世界で、リアルワールドは男性優位のような、そういう対比で見せていって、「女性とは」「男性とは」という入り口のテーマ性がこの作品には多少あると思うんです。
だけど、最終的にその人、個人としてどう生きるかみたいなところに話が進んでいって、観ている方に判断を委ねているつくりになっているところが、とても映画っぽくて好きです。
あと、複数の女性の名前が「バービー」、複数の男性の名前が「ケン」っていう設定もめちゃくちゃおもしろいなと思いました。
名前がみんな同じ。そこから個を見出していくことは、今の時代にすごく合ってる。どこ所属で、どこ出身で……とかではなくて、「あなたは何をもって何をめざして、どういう人なんですか?」っていう時代になっていくと思うので、個人がそれぞれで自立しないといけないときに勇気をもらえる映画だなと思いました。
毎日のファッションを楽しむことが私の幸せです♡
ーーバービーはつねにハッピーに生きている印象も強いですが、高畑さんがハッピーに過ごすために普段から心がけていることは?
洋服が好きなので、毎朝何を着ていくかを考える時間はものすごく幸せです! ドラマの撮影とかに入っちゃうと、本当に現場行くだけの服になっちゃうんですけど、それでもやっぱり好きな服を着ていたほうが楽しい。ジャージで、コンビニも行けないタイプ。それは、誰かに見られるとかは関係なくて、ただ自分が好きな服を着ているだけで楽しいなあと思うから。
洋服を選ぶことは、人生の楽しみにはなってますね。全人類が裸で生活をすることになったら、私の楽しみは少なくなると思います(笑)。
ーーその時々で選ぶ服装は、ジャンルが変わったりも?
すごくバラバラです。その日の気分もあるし、TPOもなんとなく気にするようにはしてます。
たとえば、誰かと約束しているなら、その人と合うのはこの洋服かなとか、女友達に会うなら、カラーマスカラをしていったら絶対気づいてもらえるかなとか、そういうことも考えています。
ーー映画『バービー』に関わることで、ピンクアイテムを着ることが多くなったとおっしゃってましたが、携わる作品で、自分が買うアイテムが変わったり、着るものでテンションを上げていくのですか?
そうですね。この役作りのためにこうしていこうってことは考えたことはないんですけど、自然とちょっと引っ張られていることはあります(笑)。
私は役によって、髪を切ったりすることが好きなので、その髪型や髪の色によっても似合う服がどんどん変わっちゃうんです。それで、おのずと着るものが変わっていくことはあります。
ファッションが楽しい!音楽もカッコいい!とりあえず観てください!
ーー改めて作品をご覧になった感想や、見どころを教えてください!
私は、もともとグレタ(・ガーウィグ)監督が大好きなんです。ただ、彼女がバービーを実写化するという時点で、自分の中で全然繋がらなくて(笑)。ポップなエンターテインメント作品というより、どちらかというと、ストーリー性のある作品を作られる印象だったので。
だから、いざ作品を観てみたら、そのポップな世界観が衝撃的に完成されているプラス、ストーリーもめちゃくちゃあって、こんな掛け合わせができるんだって感動しました。
思い描いていたよりも大人が見られる作品だなとすごく思いましたね。受け取る方によって、相当印象が変わる作品だろうなとも思っています。台本を読んでいても、声に出して笑っちゃうような、シニカルというか、ブラックジョークも盛り込まれていましたし。
演じる俳優さん方もちょっと大人なんです。バービーって20代ぐらいの印象なんですけど、マーゴットも、(ケンを演じている)ライアン(・ゴズリング)ももっと大人。だからこそ完璧からの物悲しさを持っていて、深さみたいなものがどんどん見えてくる。バービーっていう人形からここまでストーリーって広がるんだって。友達にめちゃくちゃすすめまくっています(笑)。
おすすめしたいところは、絵の力。とくに序盤は、全部ピンクで、バービーの世界のまんま! どうやって撮っているんだろうってぐらい完璧に再現されています。絶対、皆さん感動するだろうなって思いました。
それから、音楽もカッコいいし、ファッションも見ていて楽しい! 観る前と映画館を出た後の映画の印象がすごく違う作品だと思います。 最終的な決断も、想像がつかないところに転がっていきますし、ここを見てが、ストーリー的には言いづらいので、とりあえず観に行ってほしいです!
可愛いが渋滞している映画『バービー』♡
リアル世界とのギャップも楽しんで♪
【STORY】
どんな自分にでもなれる完璧で“夢”のような毎日が続く“バービーランド”で暮らす、バービーとボーイフレンド(?)のケン。ある日突然、身体に異変を感じたバービーは、原因を探るために、ケンと共に“悩みのつきない”人間の世界へ! そこでの出会いを通して気づいた、”完璧”より大切なものとは? そして、バービーの最後の選択とはー?
キャスト:
マーゴット・ロビー「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」
ライアン・ゴズリング「ラ・ラ・ランド」
監督・脚本:
グレタ・ガーウィグ 「レディ・バード」「ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語」
脚本:
ノア・バームバック「マリッジ・ストーリー」
プロデューサー:
デヴィッド・ヘイマン「ハリー・ポッター」シリーズ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
*Staff*
Photo:booro
Interview & Text:Natsuki Miyahira