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【Z世代の働き方】Oshicoco代表・多田夏帆さん「今は他のことを捨ててもがむしゃらに働きたい」

Z世代は何を考え、なんのために働いているのでしょうか? Z世代の働き方を探る連載第1回。今回は、推し活を広め、オタク×かわいいの世界を発信する活動を行う株式会社Oshicocoの代表取締役・多田夏帆さんにお話を伺いました。

更新 2023.06.02 公開日 2023.04.17
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Z世代の働き方は?Oshicoco代表・多田夏帆さんインタビュー

Oshicoco多田夏帆さん

1990年半ばから2010年代生まれの世代を指す言葉として浸透した「Z世代」。大まかに言えば25歳以下の若者世代を指しますが、学生も含まれつつ、高卒や大卒など、社会に出て働き始める時期の世代でもあります。

2021年3月にSNSトレンドとZ世代インサイトの研究機関「memedays(ミームデイズ)」が行った「Z世代の将来に関する意識調査」(※)では、Z世代のなりたい職業は1位が「インフルエンサー」で、以下は「保育士・幼稚園教諭」、「芸能人(歌手・俳優・声優など)」、「公務員」と続きました。個性的で刺激的な職業も入る一方で、安定志向の職業も変わらず支持されており、指向が両極化していることが伺える結果でした。

そんなZ世代は、実際にどのような働き方をしているのでしょうか? さまざまなお仕事に就くZ世代にインタビューし、Z世代の働き方をひもときます。

連載第1回目となる今回は、唯一無二の“推し活メディア”を運営する「Oshicoco」代表の多田夏帆さんにお話を伺いました!

※「Z世代の将来に関する意識調査」調査対象:15~21歳 のmemedays会員女性 114名/調査日:2021年3月9日~19日/調査方法:インターネット調査

企業のコンサルがメインでも、お客様との接点は持ち続けたい

Oshicoco代表・多田夏帆さん

今や市民権を得た“推し“や”推し活”という言葉。好きなアイドルや俳優、キャラクターなどを応援する活動のことを指します。

多田さんは、そんな“推し活”するすべての人を応援するメディアや、推し活に役立つグッズなどを販売するオンラインショップを運営する会社・Oshicocoの代表取締役を務めています。

――まずは、現在の仕事内容を教えてください。

多田夏帆さん(以下、多田):経営の部分や、日々の入金確認のような事務作業もありつつ、メインは企業さんに向けてのコンサル業になってきています。推し活の熱量や、女性のオタクの人たちが何を考えているのかをお伝えして、どういう企画を出したら、バズったり人気が出たりするのかというコンサルをさせていただいていますね。割合でいうと、半分くらいはコンサル系の仕事に費やしていて、3割がSNSの更新、残りが代表としての仕事という感じです。

Oshicocoオリジナルグッズ

――コンサルというのはどういう内容を?

多田:ホテルやカフェや居酒屋などの、コラボレーションやプロデュース系ですね。カフェであれば店内の装飾や、メニューの開発などをやらせていただいています。

企業のSNSの運用や、新規事業みたいなところに企画として参加させていただくようなこともやっていますね。

事業としては、そういったtoBの部分と、SNSの発信や通販事業、ポップアップというtoCの部分があります。今は通販が基本なのですが、2か月に1回ぐらいポップアップを開催していて、直近では5月2日(火)~7日(日)に池袋パルコでの開催が決まっています。

弊社はインスタグラムから始まった会社なのですが、ストーリーは今も私が担当し続けています。投稿は社員やインターン生にやってもらっているのですが、ストーリーは私がずっとやっていて。お客様との接点は持ち続けていたいんですよね。週に2回ぐらいは質問箱で「今何をしていますか」とか「悩みはありますか」とか、みなさんの近況を聞きまくっているんです。

弊社でしかキャッチできないようなコアなオタク情報が一番の強みなので、そこはずっと大事にしたくて。お客様から勉強させてもらっています。

推しぬい服

多田:それから、みなさん自分の推し活で写真を撮ったときに「#oshicoco」をタグ付けしてくれるので、それを見ながら、こういう構図の写真が流行ってるんだとか、こういう所にみんなは行きたいんだとか、こういう色、こういう格好が好きなんだっていうのを毎日チェックしています。

商品やポップアップの空間作りなどは、そこから逆算して作っていますね。

あとはインフルエンサー事業もやっています。弊社がメディアを立ち上げてから自然とインフルエンサーと仲良くなって繋がりが増えていったので、そこを事業化しました。

※Oshicocoのオリジナルグッズ

MERYやベンチャー企業での経験が活きている

Oshicoco代表・多田夏帆さん

――20代にして代表取締役を務める苦労もあるかと思います。営業のかけ方など、仕事のやり方はどのように学んでいったのですか?

多田:基本、Googleで調べています(笑)。メールの書き方とか電話のかけ方とか、全部Googleに教えてもらいました。

――えー! まさにデジタルネイティブですね!

多田:マナーとかそういうのは実践で、あとはもうやりながら覚えていきました。私、半年間だけ会社員もやっているんですよ。大学を卒業してすぐ、あるベンチャー企業に入社して半年間勤めて、そこの社長に「起業しなよ」と後押しされる形で起業しているんです。

会社では「とりあえず営業に行け」みたいな感じで、すごく有名なメーカーの社長のところに人生3回目ぐらいの営業で行かされて、でもブチギレられて、みたいな。今考えると良い経験なんですけど、とりあえず飛び込んで厳しいことを言われるみたいな経験をたくさんしましたね。

推しのうちわ

――そこでへこたれなかったのがすごいです。

多田:営業の帰り道、「私より、絶対推しの方が忙しいよな~」「推しのほうが大変なんだから、私なんてまだまだ!」って思っていました(笑)。

ベンチャーだったので教えてもらうよりもとりあえず動くというスタンスだったのですが、逆にそのおかげで「自分でもできるかも」って思えたのもありましたね。

※多田さん自身も精力的に推し活中。いつも推しにパワーをもらっているそう

Oshicoco多田さん、MERY時代の同期と

――大学時代にはMERYでトップライターとして活躍していたそうですが、その経験も今に活きていますか?

多田:もうめちゃくちゃ活きています。大学4年間、女の子たちが何を考えて、何に悩んでいるかをずっと考えていたので。常にネタを探すマインドは、MERYで学んだものです。

何百記事も書いて、500万PVを超える記事もあれば5万PVで終わる記事もあって、なんでそこに差が出るんだろうと考えたときに、伸びた記事は全部コンプレックス系だったんですよね。「小顔に見せるためには」とか「着やせするには」とか。それで女の子たちの自己肯定感が低いことに気づいたんです。みんな本当に悩んでいるし、自分自身もそうだなと。今はSNSもあって人と比べる機会も多いですし。

そういう時代で明るく生きていくにはどうしたらいいんだろう、という問いの私なりの答えが推し活だったんです。推しっていう言葉はアイドルやアニメが対象だと思われがちですが、そうではなくてもっと広く、好きなものがあって、それを素直に好きだと認めて発信して、それを糧に生きていくということ。

現代人が明るく楽しく生きていくのには推し活が一番だという気付きをもらったのはMERYだったので、それが起業の動機にも直結したと思います。

※多田さんがMERY卒業時に同期と撮影した写真

1日のスケジュールは?

Oshicocoの社員と撮影した写真

――毎日同じではないと思いますが、大まかな1日のスケジュールを教えてください。

多田:定時が10時~19時なので、9時半くらいにオフィスに出社します。弊社は週5日あるうちの4日が出社で、1日がリモートというやり方を導入しています。

おしゃべりからいろんなアイディアが生まれると思っているので、出社したら朝会をやってみんなで最近あったことを言い合ったり、面白かった記事を共有したりしています。

朝会や掃除をして、そのあとは大体1日2、3件ぐらい打ち合わせや営業のミーティングをやり、合間に提案資料を作ったり、SNSの更新をしたり、メールを返したり、インフルエンサーの方々と連絡を取ったりしています。

社員からの確認や定例でわりと昼間は埋まっているので、自分の仕事ができるようになるのが夜7時、8時から。そこから毎日終電まで働くというのが、今の私のスタイルです。帰ったらご飯を食べて、今の推しのタイドラマを観て、寝るのは大体2時3時になりますね。

※Oshicocoの社員と

書籍「インテグラル理論」

――ワークライフバランスを重視する世間の流れとは真逆のスタイルですね(笑)。

多田:経営者は月500時間ぐらい働かなきゃいけないみたいな言説があるんですよ(笑)。いろいろな経営者の本を読むと、そういうことが書いてあって。最初はどうしたって量をこなさないと、効率化もできないですしね。まだ会社もようやく二期目が始まったばかりですし、今は他のことを捨ててでも、がむしゃらに働く時期かなって。

ただ、うちの社員は若い女の子が多いですし、自分以外は大体夜7時半から9時半ぐらいまでには帰らせています。

――休日も仕事を?

多田:そうですね。ただ、土日は昼くらいまでは寝て、午後からまた夜まで働くっていう感じです。家や近くのカフェで仕事したり。大体平日は普通の仕事で終わってしまうので、土日に会社の方向性や事業計画というか、大きな視点の考え事をするという感じです。

※多田さんが仕事をする上でのマインドとして、かなり影響を受けているという本

社員とのおしゃべりで流行の情報収集

Oshicoco代表・多田夏帆さん

――社員とのおしゃべりが仕事につながるというのも面白いですね。

多田:日頃から、仕事って何らかの課題を解決しないといけないと思っていて、自分がもっとこうだったらいいのにとか、嫌だなとか悲しいなとか、何か“ペイン(痛み)”に感じているものを貯めておく作業をしています。

そこから「(痛みをなくすために)もっとこういうのがあったら嬉しいな」と考えていくような感じですね。

ガチガチにマーケティングで作り込むみたいなことはやっていなくて、本当に社員と「これかわいくない?」「これ欲しくない?」とかそういう会話から仕事につなげていくことが多いです。

Oshicoco代表・多田夏帆さん

――最近の推し活の流行にはどんなものがありますか?

多田:3月に渋谷でポップアップを開催したのですが、最初に用意していた数百個が一気に完売してしまった商品がありまして。

アルファベットのパーツを入れられるキーリングとブレスレットなんですけど……みなさん、自分の推しの名前をアルファベットで作ってアクキー(アクリルキーホルダー)につけて写真を撮るんですよ。

あとは推しの名前を入れたブレスレットをして、アクスタ(アクリルスタンド)を手のひらに持った写真を撮るのも流行っています。推しの名前を、自分のネイルと一緒に撮るんです。

※写真は多田さんの推しのタイ俳優さん。左は自作アイテムで、右は公式のアクスタ。こんなふうにネイル、ブレスレットと一緒に撮影するのが今の流行りだそう。

お客さんに直接会えて生の声を聞けるとやりがいにつながる

ポップアップイベントにて

――どういうときに仕事のやりがいを感じますか?

多田:ポップアップで「本当にOshicocoが大好きで」とか「有休をとって地方から来ました」とか言ってくださるお客様が多くて、そういう声を聞くと本当にやっててよかったなって心底思います。

まだ1年目がやっと終わったぐらいの会社なんですけど、起業してからの記憶がないくらい一生懸命仕事をしていて、その間にお客さんがちゃんと見てくださっていて。インスタから始まった会社で、オンラインの繋がりだったのが、現地でお客さんと直接会えて、感想をいただけた瞬間に、本当に何でもできるなってすごく思うんです。

※ポップアップイベントにて

今年は海外展開も視野に

Oshicocoのオリジナルグッズ

――今後の野望はありますか?

多田:絶対、世界に行きたいと思っています。日本は人口が減っていくし、未来に希望が持てないことも多いですよね。そんな中で、日本は何なら世界で戦えるかなって真剣に考えたんですけど、多分食事と観光だなって。日本食は世界一おいしいし(笑)、観光資源もたくさんありますよね。

そう考えたときに、私たちがやっている「かわいい×オタク」の文脈はすごく海外受けがいいんですよ。実際ポップアップには海外のお客さんもいらっしゃるんですね。インスタも始めてから今日までずっと5%は海外からの流入。日本のかわいいもの、オタク的なものが好きな人って、世界中にいるんです。

※Oshicocoのオリジナルグッズ

Oshicoco代表・多田夏帆さん

多田:私が今やっていることは本当にちっちゃいですけど、世界に持っていったら、より受けるかもしれない。日本だと当たり前になっているこの「かわいい×オタク」文化は、海外ではすごく新鮮だし面白い。目の前のお客さんを大切にしながら、将来的に海外にも出店したいし、海外の人たちに向けても何かしたいということを考えています。

実際、最近は海外の企業さんとの取り組みも少しずつ始めています。海外のスマホやキーケースのメーカーさんとお仕事させていただいたりとか。営業に行くと、けっこう話を聞いてくれるんですよ。

最初から世界を見据えていたわけではないんですが、社長という立場になったときに、自分が視座を下げてはダメだと思って。

世界を良くするには、アジアの、特に女の子たちの才能がもっと世の中に出ていくことが重要だと思っているんですね。アジアのガールズパワーを大爆発させたらもっといい世の中になるって本気で思っているし、そこにOshicocoのやりたいことがある。でも目標が大きすぎるから、日々死ぬほど働くしかないんです(笑)。

今回、インタビューしたのは……

Oshicoco代表・多田夏帆さん

多田夏帆さん

株式会社Oshicoco代表。
“「スキ」の力で人々をエンパワーメントし、多様な生き方が肯定される世界をつくる”をミッションに、SNSメディア事業、EC事業、企画コンサルティングなど、多岐にわたって“推し活”文化を世界に広める発信をしている。

撮影/吉川綾子

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