扶養から外れるってどういうこと?
学生さんなら、アルバイト代をたくさん稼ぎ過ぎると「親の扶養から外れる」というキーワードを耳にしたことがあるかもしれません。でも、扶養から外れるというのが、具体的にどのような状態なのかわからない人もいるはず。まずは『扶養』や『扶養控除』の意味をチェックしましょう!
「扶養」の意味を押さえておこう
扶養はメインで働き収入を得ている家族が、配偶者や子どもなど収入の少ない家族を経済的に支えることです。ここでは子どもが親(父か母どちらか)の扶養に入るケースで紹介します。
扶養には2種類ありますが、親の扶養に入るには、いずれも子どもの年収が一定以下でなければいけません。
一つ目は税金に関係する『税法上の扶養』で、子どもの年収が『103万円以内』であることが加入基準です。年収103万円以内であれば親が扶養控除を受けられ、親が支払う税金が軽減されますよ。
二つ目の『社会保険上の扶養』は年収『130万円未満』が基準です。親が会社員なら、子どもは親の勤務先の健康保険・厚生年金に加入でき、自分で社会保険料は払う必要もありません。ただし、子どもの勤務先によっては年収『106万円』でも社会保険の扶養から外れ、自分で負担する必要がありますよ。
扶養親族がいると税金が低くなる「扶養控除」
『扶養控除』とは税法上の扶養に当てはまる『扶養親族』がいるとき、親の所得から差し引かれる金額です。税金の計算のもととなる課税所得金額が少なくなるため、親の税金額が低くなりますよ。
年収103万円以内の条件を含め、下記の条件を満たしていると扶養親族と認められます。
・納税者と同一生計であること (原則同居だが、仕送りを含む場合もある)
・民法上の親族か里子
・年間の所得額が48万円(給与収入のみなら103万円)以下
・個人事業主の事業を手伝う家族である青色申告者の事業専従者や白色申告者の事業専従者ではない
16歳以上の子どもが該当する区分は2種類
扶養親族には区分があり、扶養控除の金額が違います。16歳以上の子どもが対象になるのは、『一般の控除対象扶養親族』と『特定扶養親族』です。
特定扶養親族の控除額が一般の控除対象扶養親族より多いのは、19~23歳は大学生や専門学生など、教育費がかかる年齢であることと関係しています。学費の支払いによる負担増を考慮した設定です。
ただし控除額は学生でなくても変わりません。また年齢はその年の12月31日時点のものです。
親の扶養内で働ける年収ってどのくらい?
親の扶養に入っていると、親の税金が安くなるとわかりました。では扶養の範囲内で働けるのは、年収いくらくらいなのでしょうか?よく耳にする『103万円の壁』『106万円の壁』なども解説します。
およそ100万円を超えると住民税が発生
年収『100万円』は住民税がかかる目安です。住民税には『非課税限度額』があり、これを超えると住民税がかかります。限度額は自治体によって異なりますが、多くの地域では45万円です。
年収から差し引ける給与所得控除55万円+非課税限度額45万円=100万円のため、給与年収およそ100万円までは課税されない仕組みです。
また未成年者は非課税限度額が緩和されていて、給与年収およそ204万円までは課税されません。
成人している場合、年収100万円を超えると住民税はかかりますが、親の税負担額にはまだ影響しない金額です。
年収103万超えで親の税負担がアップ
親の税額がアップするのは、子どもの年収が『103万円』を超えたときです。103万円より多く稼いでいると親の扶養控除から外れ、親の課税対象となる所得額が増えることで納税額も上がります。親の年収によって異なりますが、税額が10万円ほど増えるケースもあるはず。
加えて、子ども本人の所得税の負担も求められるラインです。103万円以上であれば、バイト代から所得税を払わなければいけません。
親の扶養控除がなくなり、子ども本人の所得税も発生と、ダブルで負担が増えるため『103万円の壁』ともいわれていますよ。
フリーターなら106万円の壁にも注意
さらにバイトの年収が増え『106万円』を超えると、子どもが自分で健康保険料や厚生年金保険料を支払わなければいけないケースもあります。これが『106万円の壁』です。
該当するのは年収106万円に加え、下記の条件をすべて満たすケースです。
・勤務先の正社員数が501人以上 ※2022年10月からは101人以上
・月収8万8,000円以上
・1年以上雇用される見込み ※2022年10月からは2か月超
・勤務時間は週20時間以上
・学生でない
また、正社員数にかかわらず、勤務先が健康保険・厚生年金の適用事業所となっている場合も該当します。
学生は年収106万円を超えても健康保険料や厚生年金保険料は発生しませんが、フリーターは106万円の壁に要注意です。
130万円からは確実に扶養から外れる
社会保険の扶養からも確実に外れるのは年収『130万円』です。扶養親族として親の勤務先の健康保険・厚生年金に加入していたなら、扶養を外れ自分で加入することになりますよ。
バイト先の健康保険や厚生年金の加入条件を満たしているなら、勤務先で加入すればOKです。加入できないようであれば、国民健康保険や国民年金の加入手続きをしましょう!
社会保険料を支払うと手取り収入は減りますが、将来の年金額を増やせる・傷病手当金を受け取れるなどのメリットもあります。
雇用保険も年収130万円を超えると加入するケースが多いはず。ただし、健康保険や厚生年金の加入は年収が基準であるのに対し、雇用保険は雇用期間や週の勤務時間が基準になる点が違いますよ。
学生ならではの控除「勤労学生控除」って?
働きながら学生として勉強しているなら、『勤労学生控除』を受けられるはず。ただし親ではなく、子ども本人が受けられる控除という点には要注意です。どのような制度なのか見ていきましょう!
130万円以下なら所得税がかからない
通常であれば年収103万円を超えると所得税がかかります。勤労学生控除を使えば、『27万円』を自分の給与収入から控除可能ですよ。
所得税の計算をする場合、さらに『基礎控除48万円』と『給与所得控除55万円』も収入から差し引けます。控除できる金額は合計で『130万円』です。
そのため1月1日~12月31日の年収が『130万円』以下であれば、所得税がかかりません。勤労学生控除を利用するには、下記の条件を満たしている必要がありますよ。
・給与所得といった勤労による収入があること
・株や家賃収入など勤労以外の所得が10万円以下
・合計所得金額が75万円(=給与年収130万円)以下
・大学や専門学校など特定の学校の学生であること
扶養控除と併用はできず親の税負担は増える
勤労学生控除を使うと、子ども本人が納める所得税を0円にできます。ただし親が受けられる扶養控除との併用はできません。そのため勤労学生控除を使うと、親の税負担は増えます。
子どもの税負担の軽減分と親の負担が増える分を比較してから利用すると、賢く使えて◎。1人で決めるのではなく、家族と話し合って決められるといいですね。
親の扶養内で働く際に注意すべきこと
税金や社会保険の負担が増える年収の基準とともに、『掛け持ちバイト』についても確認しておきましょう!見落としがあると、思わぬ負担増が発生するかもしれません。
掛け持ちのバイトは確定申告が必要な場合も
二つ以上のバイトを掛け持ちしている人もいるはず。この場合、全てのバイト先の収入を合計した年収が、扶養に入れるかの基準となりますよ。
合算した年収が103万円以下なら親が扶養控除を利用でき、自分にも所得税がかかりません。また、バイト先の給料から所得税を源泉徴収されていたなら、確定申告で所得税を返してもらえる可能性がありますよ。
年収が103万を超えている場合は、原則、確定申告が必要です。どのバイト先からも源泉徴収をされていない場合は、確定申告により納税しなくてはなりません。
源泉徴収を1社以上でされている場合でも、年末調整ができるのは1社のみなので、正しい税額を納めるには確定申告が必要です。このケースでは納め過ぎた税金が還付されたり、反対に追加で支払ったりすることもあります。
親にかかる負担も考えて働き方を決めよう
収入の少ない親族を経済的に支えることを扶養といいます。学生であれば親の扶養親族になっているケースが多いはず。親の所得から扶養控除が差し引かれ、税金の負担が少なくなる仕組みです。
バイトで稼ぎ過ぎると、親の扶養から外れる可能性があるため注意しましょう!勤労学生控除の利用も、親の税額が増えるため、相談した上で利用を決めると◎。
あなたのバイト代や税額負担を有利にできても、親の負担は増えているかもしれません。親の支払う税金も考慮した上で、働き方を決めてくださいね。
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