ウッチーこと内田篤人さんに聞いた♡メンタルを安定させる方法
昨年より、人との距離感を考えたり、マスクが必須だったりと、何かとストレスのたまる生活が続いてます。なかなかリフレッシュできず、気分の落ち込みが続いている人も多いのではないでしょうか。
そんなときに読みたいのが、元サッカー日本代表の内田篤人さんの著書『ウチダメンタル 心の幹を太くする術』。18歳のときから32歳の昨年まで、日本と世界のサッカー界のトップで戦ってきて、重圧やケガと長年向き合ってきた内田さんの選手生活で鍛えられたメンタルに迫った本です。
気分が落ち込み気味になっている人、ふだんからストレスをためがちな人、まわりの影響を受けやすい人などは、内田さんの考え方が、心の安定を取り戻すきっかけになるかもしれません。心を揺さぶられずに過ごせる術を、内田さんのインタビューと著書本から探ってみたので、ぜひ参考にしてみてください!
最後に生き残っていくのは“タフ”なやつ

昨年の8月にサッカー選手を引退した内田さん。現役時代と引退した今、環境が変わることで、性格やメンタルの変化はあったのでしょうか?
「そんなに変わっていないですね。基本的に人に流されないタイプ。そもそも他人に興味ないんです(笑)。誰がどうしたっていうのも興味ないし、いろんなことに関心がない。だから、それが長所でもあり短所でもあるんです。
現役時代でも、ドイツのチームに移籍するとき、自分が行くチームをあまり知らなかったし、サッカーをやっているのにヨーロッパのサッカーの試合も観ていなかった。目の前に置かれた状況だけを知るくらいが僕にとってちょうどいいんです」(内田さん)

性格的には変わらないという内田さん。ただ、幸せを感じる瞬間がちょっと変わったそうで、「選手時代は、サッカーをやっているときが一番幸せだと思っていたけど、今は家族と過ごしているときに幸せを感じます」とのこと。メンタル的にもすごく穏やかなのだそう。
「今はやりたくないことはしていないので、ストレスを感じることもないです。選手時代のような刺激はないですけどね。
本を出すときに、今までの自分を振り返ったんですが、タフな局面に身を置いていると、どんどん性格やメンタルは変わっていくのかなと思いました。
僕も、サッカー選手として結果を残せるように、競争だったり、疲労だったり、怪我もそうですけど、いろいろ経験して、自分なりに工夫して生きてきたので、図太い性格になったのかも。
選手時代はすごく踏ん張っていましたね。外国で生活するのも根性が大事だと思っているし、最後に生き残っていくのも、サッカー技術がすごいやつというよりはタフなやつなんじゃないかと思います」(内田さん)
右ひざのケガの影響もあり、選手生活は昨年で終止符を打ちましたが、間違いなく、その“タフなやつ”のひとりだった内田さん。過酷なプロサッカーの世界で戦い抜くことができた、メンタルの秘密を著書本からピックアップしてみました。
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メンタルは強弱ではなく、波の上下を抑えることがポイント

内田さんの中にあるメンタルのイメージは、強弱ではなく、「上下」なのだそう。
「上下する波線がなるべく大きく波打たないようにすることが大事。メンタルの振れ幅を抑える……それができる人が“心の幹が太い”人。
サッカーで言うと、試合前にすごく気合いが入っていて、『行こうぜ!』とまわりを鼓舞するけど、試合に負けちゃうとドーンと沈む。こんなふうに、感情が乱高下するような選手は、プレーの波も激しくなってしまう。それはプレースタイルにも出るし、メンタル的にももろく見えるんですよね。
この感情の波を極力小さく、細かい上下で済ませるのが“心の幹を太くする”方法だという考え方です」(内田さん)
内田さんの考える「心の幹を太くするポイント」の5つを厳選したのでご紹介します。
1:やらなきゃいけないことを作らない

メンタルを整えるために、ルーティンを作ったり、食事や睡眠に気をつけたりと、“やること”を増やしていませんか?
内田さんは、振れ幅を少なくするためにも、“やること”を決め過ぎないほうがいいと話します。
たとえば、決まった時間に眠ると決めていたら、大事なプレゼンなどの前にその時間に眠れないと不安に陥りやすいですよね。それは、心の触れ幅が大きい人の特徴。
内田さんは、試合前に眠れないときは「よし、ちゃんと緊張してる。試合に向けて準備できてるじゃん」と考えていたそう。
「こうしなければいけない」と決めすぎると、ブレたときの振れ幅が大きくなってしまうデメリットが。自分なりの心の保ち方を検証することが必要です。
2:最悪の状況も想定しておく

実際に悪いことが起きても、いいことが起きても、「なんだこんなもんか、大したことないな」と思えるくらい、大げさに予測をしておくこともポイントなのだそう。
「僕は、自分がやってきたこと、成し遂げてきたことに、“想定外”といえるものは、ほとんど存在しません。“想定内”にすることで感情を入れすぎないようにできるので、心の振れ幅を抑えられます」(内田さん)
心の振れ幅が大きい人は、感情を入れすぎる傾向があるそう。自分を追い込んでいることを発信したり、感情を外に伝えたり、醸し出そうとする。
結果として、気合いを入れすぎることで、今まで通りのパフォーマンスが出せない、うまくいかなかったときに大きく落ち込む経験をすることになるそうです。
「ただ、ずっと大げさに予測してきたから、本当にうれしいことがあっても、“こんなに頑張ってきたのに、これだけしか喜ばないんだな”とか感じちゃうんだよね(笑)」と内田さん。それが少し悲しかったりするそうです。
3:ダメだったときの保険プランも持っておく

内田さんがメンタルを上下させないために、絶対に持つようにしていたのが“プランB”。
やれるだけのチャレンジをして、自分の力を最大限に振り絞る覚悟があるうえで、保険を持っておく。打算的、弱気、逃げと思われようと、人に言わなければいいだけです。
「何かに迷ったとき、悩んだときに保険のプランBがあれば勇気を持てるし、その場でもうちょっと頑張ろう、踏ん張ろうと思えるはず」と内田さん。
4:人をよく見て、自分が「なりたくない」ことを知る

何かを判断するとき、「どっちがカッコいいかな」と考えることが内田さんにとって、ひとつの判断基準になっていたそう。
今まで多くの人たちを見て来て、“この方法、オレじゃできないな”、“それってカッコ悪くない?”など、その言動をカッコいいか、カッコ悪いを考えて、自分の生き方の指針にするようになったのだとか。
「誰かになることはできない。自分は自分でしかない。だから、自分なりの『ああなりたい』じゃないといけないと思います」(内田さん)
そのヒントは、人をよく見ること。たくさん見て、経験して、話をして感じること。そこに、心の触れ幅を保つためのヒントが詰まっているそうです。
5:「踏ん張る」ことが大事

分厚い壁が迫ってきていたとき、その壁を過大評価したり、自分を過小評価して「無理」と逃げることは、根性が足りないと話す内田さん。
「結果は自分ではどうにもならないことがあるけど、どんな結果であっても、“やれることはやったもんね、仕方ないよね”って言えるところまではやろうと常に思っていました」(内田さん)
目の前の壁を押し返そうと“踏ん張る”、その力を発揮するためには、強い思いが必要。“心残りを絶対しない”と耐えることで、ブレそうな心を支えていたそう。
ただ、“踏ん張る”ことにはパワーが必要。しんどいときは、どこかでちょっと“息を抜いて”みることも必要だそうです。
「外では見せない分、絶対的に信頼する人、“踏ん張っている”途中だってわかっている人、わかってくれそうな人、そういう人には少しだけしんどい心中を吐き出す。
僕は選手時代、試合に出られないときやケガで調子がよくないときに、長谷部(誠)さんやマネージメントなどをしてくれているアッキー(秋山祐輔さん)に『オレ、ダメですわー』ってよく言ってました」(内田さん)
息抜きをして踏ん張っても、押し返せない壁があったら……「いったん、プツッと切る」と内田さん。ただ、何もしないと引きずってしまうから、「やめる」と決断を口にしたり、何か行動することでスイッチを切るのだとか。
そして、焦らずにいつかまたスタートが切れることを信じて待つそうです。
みんなもっと図々しく生きていい!

選手生活の中でも、とくに20代は激動の時間を送った内田さん。今の20代に伝えたいことは?
「もっと図々しく生きていいと思います。まわりのこととか気にしなくていい! 自分の心のままに行動してほしい。
あと、夢を見つけてほしい。目指すもの、夢中になるものがあると、行動そのものが変わる。まわりには理解できないくらいまっすぐで、力強い行動ができるようになる。だから、20代の人にはなんでもいいから夢中になれることを見つけてほしいですね」(内田さん)
話を伺ったのは……内田篤人さん

内田篤人 Atsuto Uchida
元プロサッカー選手。1988年3月27日生まれ、静岡県函南町出身。清水東高校を卒業後、プロサッカーチームの中でも強豪の鹿島アントラーズに入団。1年目開幕戦から右サイドバックのレギュラーに定着し、Jリーグ3連覇を達成。2010年にドイツ・ブンデスリーガのシャルケ04へ移籍し、チャンピオンズリーグベスト4、ドイツカップ優勝など、数々の実績を残す。また、10代からサッカー日本代表にも選出され、北京五輪、南アフリカ・ブラジルの2大会ワールドカップを経験。引退後の現在は、DAZNで冠番組『内田篤人のFOOTBALL TIME』に出演中。ほかにも、U-19サッカー日本代表のコーチを務めたり、『報道ステーション』(テレビ朝日系)の水曜日のレギュラーキャスターや、ユニクロやSAPPORO、LIXILなどとCM契約を結ぶなど、多方面で活躍中。
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生きづらい現代社会だからこそ、心のメーターを常時一定に。重圧や怪我と長年向き合ってきた、内田篤人氏が実践し続ける、メンタル統制メソッドを惜しみなく掲載している一冊。また、中田英寿氏、岡田武史氏、佐藤可士和氏とのスペシャル対談も必読です!
Photo:Chiyoe Sugita/Tomoko Shimabukuro