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宮田理江さん宮田理江
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今、気になるのは「物語」を秘めたナラティブ・ファッション!根っこの想いを共有

今、おしゃれ好きの心を突き動かすものは何なのか?それはブランドやアイテムが持つ「物語」なんだそう。そこで今回は、イタリアの気鋭ブランドを紹介するプロジェクト「THE NEW ITALIAN COOL」から、独自のストーリー性を持つ6つのブランドを注目のトレンドキーワードと共にご紹介していきます。

更新 2021.10.12 公開日 2021.10.13
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今おしゃれ好きを夢中にさせるのは、ブランドやアイテムが持つ「物語」

今、おしゃれ好きの気持ちを動かすのは、独自の「物語」を持つブランドやアイテムだといわれます。

オリジナルのストーリーを語りかけてくるような「ナラティブ(narrative=語り)」感を帯びたブランドやアイテムには、画一的な大量生産品とは異なる、人間味のある魅力を感じるようです。
narrativeとは「物語」という意味ですが、MERYの皆さんがSNSで話題を共有するのも、一種のナラティブで、割と身近な出来事です。

それぞれの物語の根っこにあるのは、オンリーワンの存在感。そこが素敵だから、誰かと話題をシェアしたくなるのも自然な流れでしょう。

今回、ご紹介するのは、まだ日本で知られていないイタリアの新進気鋭ブランド。
ご存じのように、イタリアはデザイン大国。さすがのセンスを感じさせるのに加え、素材の良さも魅力です。さらに、最近はブランドの成り立ちやポリシー、こだわりなどを持ち味とするナラティブ系ブランドが相次いで登場しています。

そこで、イタリアの気鋭ブランドを紹介するプロジェクト「THE NEW ITALIAN COOL」から、それぞれにストーリー性がある、6つのブランドを通して、トレンドキーワードと共にブランドと物語の関係を解き明かしていきます。

トレンドキーワードと共に“独自のストーリー性を持つ6ブランド”をご紹介

1:「サステナブル」地球によりよいポジティブなおしゃれ

サステナビリティー(持続可能性)はもはやファッションの合言葉になってきた感じがあります。でも、サステナをうたう服には、ややシンプルなデザインが多かったりします。ナチュラル感を印象づけようと、人工的に見えがちな派手系カラーや、凝ったディテールを避ける傾向があるからです。

その点、イタリア発のブランド「Progetto Quid(プロゲット・クイド)」はサステナの本気ぶりとフェミニンなテイストを兼ね備えている点で特別な存在です。持ち味はロマンティックでポジティブなムード。おしゃれな気持ちを我慢しなくても済むサステナ服が新たな魅力を感じさせます。

2012年に立ち上がった、来年で10年と、まだ若いブランドですが、サステナの本気度は別格。その理由は最初からサステナを前提にスタートしたから。「ファッションはもっと社会の役に立てる」という想いを出発点に立ち上がっただけに、原料から加工、販売まで、全体にサステナ意識が行き届いています。

そして、発想も大胆。たとえば、よその企業で余った生地を自分たちが集めて別のデザインに仕上げているのは珍しい取り組みです。
「サステナビリティ」を言葉で終わらせない行動力は頼もしく映ります。

2:「シーンフリー」いつでもどこでも重宝アウターは、着物から着想

お天気がいっそう不安定になり、オールウェザーのアイテムが一段と頼もしく感じられるようになってきました。でも、いわゆる「レインウエア」は機能優先のところがあり、見た目が無愛想になりがち。

「防水だから仕方がない」と思われてきましたが、イタリア発のブランド「KIMONORAIN(キモノレイン)」はしっかり水を弾くのに、おしゃれなデザイン。しかも、ブランド名に「レイン」と入っている通り、レインウエアが柱のブランド。
ただ、自ら「レインコートと呼ばないで」とアピールしているように、天気に関係なく着やすい、ファッション性の高さが強み。レインウエアを突き詰めた結果、その枠を突き抜けたわけです。場面を選ばない「シーンフリー」のカテゴリー特化型ブランドならではの強みと言えるでしょう。

「キモノ」という名前を見て分かるのは、日本文化へのリスペクトです。日本の着物から着想を得たシルエットでサイズフリー。さらにコートを脱いだときはリュックのように肩掛けできるのでハンズフリーになる便利さを兼ね備えています。
そして、表と裏をひっくり返して着られるリバーシブルが基本。しかも、ベースはユニセックス。季節も天気も性別も越えたフリー志向の着こなしが可能なマルチウエアです。

3:「ジェンダーレス」自分好みにアレンジできるオーバーサイズ

カリスマ的歌手のビリー・アイリッシュがまとって、支持を広げた装いに、性別にとらわれない「ジェンダーレス」のファッションがあります。

オーバーサイズの服を選んで、体の線を拾わない着映えに仕上げるスタイリングは、トレンドを超えた、服の着方になっています。オーバーサイズのアイテムを選ぶ際、主役になるのは、最もシルエットに生かしやすいアウターで、秋冬はコートがメインになってきます。
イタリアの「T_Coat(ティー コート)」はジェンダーレス仕様のアウターがお得意。オーバーサイズもジェンダーレスも最初からテーマに据えているブランドです。

たとえば、アメリカのミリタリー服から発展したシャツジャケットもこのブランドらしいウエアです。名前の通り、シャツとジャケットを「いいとこ取り」したような新顔のはおりもの。
軍服に由来することもあって、サイズレスで着やすいウエア。シーズンを超えて着回しやすい点でも重宝な服で、ジェンダーレス×サイズレス×シーズンレスの「3レス」は、自在に着こなせるオールマイティー感につながっています。

4:「テクノロジー」ハイテクと職人技の融合 視線を呼び込む靴底

イタリアは昔から靴で有名なお国柄です。腕利きのシューズ職人が集まって、独自のハンドクラフト技術を磨き上げてきました。

そうした長年のノウハウは現代テクノロジーを味方にいっそう進化。「RBRSL_RUBBER SOUL(アールビーアールエスエル ラバーソール)」は、現代イタリアの靴作りを象徴するような存在です。
職人技を生かしたラバー(ゴム)使いが最大の強み。靴底のラバーにまでたくさんの色をちりばめるようなデコラティブなディテールにも、この伝統的な技術が生かされています。

近年のファッションでは「掛け合わせ」が重要になっています。特に異なるテイストのクロスオーバーは、目新しい印象やこなれたムードを引き出します。こちらのブランドが得意なのは、ストリートとクチュールのミックス。
ストリートのアイコン的な存在のスニーカーに、ジュエリーを思わせるカラフルな装飾を施しています。ゴツめのシルエットで、ボリュームがたっぷりした「ダッドスニーカー」に、遊び心を盛り込みました。ショートブーツのようなおしゃれ履きに生かしたくなる新発想スニーカーです。

5:「フェミニズム」歴史的な偉人女性をリスペクト 誇らしい気分に

女性の権利や女性へのリスペクトを重んじる流れが一段と勢いを増してきました。ファッションの世界でもこうしたフェミニズム的な取り組みを重んじるブランドが相次いで登場しています。

ミラノで50年以上の歴史を持つ「Le Biondine(ル ビオンディーヌ)」もその一つ。文字でスローガンを掲げるのではなく、デザインに落とし込む形で、女性史を歌い上げるようなバッグシリーズを企画しました。こちらのバッグには歴史上の特別な存在となった世界の女性たちの名前が付けられています。

アートや冒険、政治など、いろいろな分野で活躍した女性を選んで、バッグのモチーフに位置づけました。女性パイロットとして初めて大西洋単独横断飛行を達成した飛行家といった人物の業績や人柄を、バッグのフォルムやディテールに「物語」として写し込んでいます。
過去の偉大な女性たちと、バッグを持つ現代女性の間を、歴史的なストーリーでつなぐような試み。偉大な女性たちをモチーフに迎えたバッグを持てば、誇らしい気分に導かれそうです。

6:「ファンタジー」お守りのように身につけたい新感覚ジュエリー

現実から離れたファンタジーは、装いにも特別感を添えてくれます。占いや祈りなどの神秘的なイメージも気持ちをときめかせてくれそう。服やバッグでも生かせますが、やはりジュエリーやアクセサリーは、スピリチュアルな魅力と相性が優れています。

ミラノ発の新感覚ジュエリー「PLV Milan(ピーエルヴィ ミラン)」は物語性を帯びた提案が魅力のブランド。まるでお守りのような感覚で、身につけられます。
たとえば、ネックレス「愛の10グラム」は10グラムの分銅(はかりに乗せる重り)がモチーフ。タイのフリンジ(糸を束ねた、房飾り)を添えて、独創的なたたずまいに仕上げています。

「愛の10グラム」は金属の重りと糸の房という、従来のジュエリーとはかけ離れた素材を用いて、独自の物語世界を演出。分銅を選んだ理由は「愛を重さでは計れない」という、逆説的なメッセージから。
異素材が醸し出す多様性のイメージは、意外にも様々な着こなしにマッチ。自分好みのスタイリングに取り入れやすいジュエリーです。身につける人の共感を誘うようなストーリーは愛着もまとわせます。

「オンリーワン」を身に纏って、自分だけのファッションストーリーを

注目のトレンドキーワードと共に6ブランドをご紹介しました。

「自分らしさ」を大切にする意識が強まってきた今は、ファッションでも大量生産ではない「オンリーワン」が欲しくなります。ストーリーを帯びたアイテムは、こちらに語りかけてくるようなところもあり、自分の物語と重ね合わせて、マイストーリー感を得やすいのも、心を動かされる理由。

そういったアイテムは若いデザイナーや小さいブランドから生まれることが多いので、まだ有名になりすぎていないブランドを、小さなショップで見つけてみるのもおすすめです!

ファッションジャーナリスト:宮田理江さん

Profile:10を超えるメディアで連載を持つファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。新聞からSNSまで多彩なメディアを通じて海外・国内コレクションのリポートや最新トレンドの紹介などを発信。次シーズンのファッション予測、着こなしテクニックの解説、おしゃれ市場の動向分析、ファッション関連ニュースの執筆、映画のファッション読み解きなどを多面的に手掛けている。著書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(ともに学研パブリッシング刊)は、中国、台湾、タイでも翻訳発売されている。

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