アナスイ2021AWコレクション
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2021年秋冬トレンドはこうなる!ミニ丈や70年代、スーパーミックスが鍵に

ファッションジャーナリストとして国内外で活躍する宮田理江さんによる、おしゃれの最新事情を丁寧に解説する連載コラムです。3回目の今回は、2021年秋冬のトレンドについて。「ANNA SUI(アナ スイ)」の2021-22年秋冬コレクションをお手本に、現在のトレンドがどう広がっているのかを読み解きます。

更新 2021.09.16 公開日 2021.08.19
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私たちの「期待(=着たい)感」がファッションのトレンドになる

17)モードな雰囲気♡ハット×黒チェスターコートWEAR

多くの人が感じる、ファッションで最大の謎は「トレンドって何?」ではないでしょうか。流行と同じ意味みたいだけれど、なぜ起きるのか、誰が決めているのかなど、意外とわからないことだらけ。

MERY読者の皆さんの中にも、そう感じている人は多いはず。今回は、この「トレンドの秘密」を説き明かします。

トレンドの意味するところは、ざっくり「流行」です。ただ、以前に比べ、期間や傾向に変化が起きています。以前はシーズンごとに新トレンドが浮上することがざらでした。でも、近年は2~3シーズン程度は続く「ロングトレンド」が増えています。ワンシーズンで流行遅れになる心配はなくなったわけです。

時には3年以上も続くトレンドがあり、じっくり自分好みの着こなしを選びやすくなっています。

たとえば、前回に紹介した「古着・ヴィンテージ」も息の長いトレンドの例。ほかにもジェンダーレスやオーバーサイズなどもロングトレンド入りしています。サステナビリティはもはや大前提のレベルに。素材で言えば、ニットの存在感が大きくなっています。

ただ、こういったロングトレンドの中にも、少しずつ変化が起きています。性別にとらわれないジェンダーレスの場合、最初はメンズ風のジャケットをウィメンズの装いに持ち込む「男っぽい格好」でしたが、今ではもっと気負わない見え具合が好まれるようになっています。

ニットは最初はパーカやカットソー、スウェットパンツが主役でしたが、近ごろはスーツ(ニットアップ)にも広がってきました。

◆着る側がトレンドを「選ぶ」時代に

18)レディライクなベージュワイドパンツ×ホワイトチェスターコートWEAR

世の中の動きと連動するのは、トレンドの性質です。たとえば、世界的に感染症が広がった2020年は、体を包み込むようなビッグアウターが相次いで提案されました。

「服に守ってもらいたい」という、着る側の意識を、デザイナー側が服に写し込んだ結果です。ワクチン接種が始まると、欧米では花柄やグリーン、フリルなどが復活。ポジティブな未来を期待する意識や、穏やかな暮らしを望む気持ちを表現しました。

このように着る人のニーズを先読みして、デザインが用意される傾向があります。つまり、次のトレンドを導いているのは、私たちの「期待(=着たい)感」だと言えます。

21)トレンドでお目立ち♡黒コーデ×ヒョウ柄チェスターコートWEAR

以前と比べて、大きく変化したのは、トレンドとの向き合い方です。昔は雑誌が発信したトレンドが強い影響力を持ちました。

でも、今は着る側がトレンドを「選ぶ」時代。たくさんのトレンドの中から、自分好みのタイプを「つまみ食い」的に選び出して、自分らしい着こなしに生かすという向き合い方が広がってきました。

このスタンスであれば、トレンドに振り回されずに済みます。イメージはブッフェ。全部をプレートに盛らず、好物だけをバランスよくチョイスする感覚です。

「ANNA SUI(アナ スイ)」の2021-22年秋冬コレクションをお手本に、トレンドの流れをつかもう

今回は、日本でも人気が根強いニューヨークブランド「ANNA SUI(アナ スイ)」の2021-22年秋冬コレクションをお手本に、トレンドの流れをつかんでいきましょう。6つのキーワードを通して、実際にどんなトレンドが次の秋冬シーズンに提案されているかを押さえておけば、これからの着こなしにも役立つはずです。先ほどのブッフェの例で言えば、本日の献立を見渡したうえで、効率的に好きな料理を選びやすくなるというわけです。

1)「ミニ丈アイテム」が復活!ブーツと合わせてスパイスを添えて

膝上のミニ丈が久しぶりに復活しました。昔から「景気が上向くと、ミニがはやる」と言われます。今回は景気が特別、上向いているわけではなさそうですが、ワクチンが広がって、コロナ禍の「先」がようやく見え始めてきたという状況が背景にあるようです。

要するに、今回のミニルックは先行きは明るそうだという「楽観」のシンボルとも言えるでしょう。

このような流れから、コーディネートをする際に、ポジティブ気分やガーリーさなどを盛り込むと、今のムードをまといやすくなります。ここまでつかめれば、スタイリングは簡単。写真のようにフリルをあしらった甘めブラウスで合わせたり、ファニーなモチーフ(柄)を迎え入れたり。この秋冬はカラータイツやブーツで脚をカバーするスタイリングも脚光を集めそう。

2)クロップド丈トップスを「通年使い」。ハイウエストボトムスで脚長効果

先のミニルックと同じく、短めのトップスもトレンドとして浮上してきました。トップスが短くなった理由のひとつは、ハイウエストのボトムスの人気が浸透してきたから。ウエストラインがすっきり見えるクロップド丈トップスはバランス的に好相性のアイテムです。トップスが短い分、ボトムス丈は長めを選ぶのが着こなしのポイントになります。

この夏、素肌を少しだけのぞかせる「チラ腹見せ」は街中でちらほら見かけました。秋から先にもクロップド丈人気は続く気配。

春夏は1枚で着ますが、秋冬はインナーやはおり物を重ねて、表情を変えられます。ブラウスの上にもふもふのトップスやアウターを重ねれば、立体感のある見え方に。脚を長く見せてくれる効果大のハイウエストのフレアパンツはスタイルアップに導いてもらえます。

3)大襟&袖コンシャス。「ダークロマンティック」で大人仕様に

ロマンティックな印象を出せる大襟は、現実逃避気分をまとえる点で、今のおしゃれムードにぴったり。世の中が暗い時期に地味めな服を選んでしまうと、気持ちまで張りを失ってしまいがち。逆に、装飾を施した「袖コンシャス」は、華やぎをもたらしてくれるディテール。オンライン会議で映る範囲を意識する「上半身映え」にも役立ちます。
フリルが印象的な「袖コンシャス」ブラウスに、星が夜空にきらめいたような、黒のジャンパースカートで合わせて、どこかミステリアスなムードを漂わせて。クラシックなチャンキーヒール靴で足元にアクセント。どこか懐かしげな時代感を帯びた装いは、歴史を意識するようになった近ごろの過ごし方にマッチ。レディーなムードが漂う「ダークロマンティック」に仕上げるのがコツです。

4)「70年代気分」がリバイバル。フレアパンツ、フリンジに柄・異素材ミックス

楽観的な気分を示す、様々な装いが打ち出されています。先に挙げたミニ丈もそうでした。

かつての年代で言うと、今から約50年前の1970年代(70s、セブンティーズ)は、「パワーにあふれていた時代」というイメージがあり、このところ再評価が盛り上がっています。ヒッピーと呼ばれたアメリカの若者たちが自由な生き方を示した時代です。象徴的な装いには、デニムパンツやフレアパンツがあり、フリンジが装いを飾り立てました。

自由な空気が濃かった70sが憧れを帯びる理由は、何かと制約が多い今の裏返しだから。これも一種の現実逃避です。

チェック柄のフリンジ付きアウターに合わせたのは、花やドット風モチーフを散らした華やかなピンク系フレアパンツ。柄ミックスや異素材のカオス感は、着る人の芯の強さを示すかのよう。多様性にもつながる、奥深いテイストミックスを楽しんで。

5)時空を超えた「スーパーミックス」。クラシック×アート×ストリートのハイブリッド

ロングトレンドを超えて、もはや一種の「スタイル」として定着しつつあるのは、常識にとらわれない「スーパーミックス」です。

これまでのコーデでは「甘×辛」や「スポーティ×フェミニン」といった型のようなものがありました。最近はあえてそれらの枠を踏み越えて、テイストを相互乗り入れさせるようなミックススタイリングが加速。ルールなしでの自分流ハイブリッド感が遊び心を印象づけます。

一見、英国調チェック柄が印象的なセットアップですが、スカートにはあでやかなレースが施され、トラッド×エレガンスが融合。きちんと感がありながら、意外感を秘めた組み合わせが「ハイブリッド」のデザイン技です。

さらに、現代アート風のプリントが施されたトップスとストリート感覚のマリンボーダー柄ハイネックをレイヤード。「クラシック×アート×ストリート」が交差するコーデの完成です。

6)肌を覆うセカンドスキン。身を守る「プロテクション」アイテム

この2年間で最も大きなファッション面での変化は「マスクの出現」でしょう。顔の下半分を覆うマスクの登場は、おしゃれ意識に変化をもたらしました。同時に、身を守るツールとして、衣服をとらえ直す試みも広がり、「セカンドスキン(第2の皮膚)」として打ち出すトレンドも生まれています。

素肌が見える面積を減らし、健康や安全を守る「プロテクション(防護)」の役割を帯びたアイテムは、コロナ禍が遠ざかったとしても、ロングトレンドとして支持が続きそうです。

髪を覆うヘッドウエアは、プロテクション意識の強まりを映す新顔アイテムです。髪や鼻・口を覆いつつ、おしゃれムードに取り込む様々なアイテムが提案されています。体にフィットするタイツは、露出を抑えながら、ヘルシーなボディラインやレッグラインを描き出します。2年にわたるニューノーマルを経験した私たちが次に望むトレンドには、見た目だけではなく、健康・衛生面の機能、ヘルシーなイメージが加わりそうです。

今回取り上げた6つのトレンドキーワードは、目新しく感じられるかもしれませんが、実は既にみなさんのワードローブ内にアイテムとして仲間入り済みのものが少なくないはずです。手持ちのそれらを眠らせず、トレンドの流れを意識して、今までとは少しだけアレンジを変えて着こなすだけで、装いを「2021年秋冬仕様」にアップデートできます。新作を1点加えて、ムードメ-カーに使うのも賢いコーデ。「ANNA SUI」のコレクションをヒントに、ブッフェでの「つまみ食い」感覚で、いろいろな新トレンドを試してみてくださいね!

ファッションジャーナリスト:宮田理江さん

Profile:10を超えるメディアで連載を持つファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。新聞からSNSまで多彩なメディアを通じて海外・国内コレクションのリポートや最新トレンドの紹介などを発信。次シーズンのファッション予測、着こなしテクニックの解説、おしゃれ市場の動向分析、ファッション関連ニュースの執筆、映画のファッション読み解きなどを多面的に手掛けている。著書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(ともに学研パブリッシング刊)は、中国、台湾、タイでも翻訳発売されている。

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