「敬語」の基本を一から学ぼう!
日本語の中でも特に難しいのが『敬語』。間違った敬語は相手を嫌な気分にさせるだけでなく、働いている会社や、自分の評判を落としてしまうかも。
正しい敬語を一から学んでいきましょう!まずは敬語の種類について基礎から解説します。
尊敬語、謙譲語、丁寧語。敬語の種類は主に3種類
ビジネスの場では直属の上司や取引先、他部署の人間や顧客などさまざまな上下関係や立場がありますよね。言葉遣いは状況にあわせて選ばなければなりません。
一口に敬語といっても、広義の意味を含めれば3種類あります。
一つ目は「尊敬語」で、立場が上の相手を立てるときに使います。二つ目は謙譲語で、自分がへりくだることで相手を立てる敬語です。
三つ目は丁寧語。相手との関係や話の内容にかかわらず、丁寧な言葉遣いで相手に対して敬意を示すときに使います。
細かくいえばもう少し種類がありますが、この3種類を覚えておきましょう!
尊敬語と謙譲語の違いって?
尊敬語と謙譲語、どう違うか知っていますか?実は簡単に見分ける方法があるんです。
ポイントは『主語』。
尊敬語の主語は敬意を示す相手。謙譲語の主語は自分自身なんです。
例文を見ていきましょう!
■お客様は先ほどランチを召し上がった。(尊敬語)
■私は先ほどランチをいただいた。(謙譲語)
このように、主語によって尊敬語と謙譲語は区別できますよ。
3種類の敬語を変換してみよう
敬語は主に動詞に対して適用されます。代表的な動詞と敬語を紹介しますので、よく使うものは覚えておきましょう!
基本形/尊敬語/謙譲語/丁寧語
食べる/召し上がる/いただく/食べます
来る/いらっしゃる/参る/来ます
伝える/お伝えになる/申し伝える/伝えます
見る/ご覧になる/拝見する/見ます
言う/おっしゃる/申す/言います
待つ/お待ちになる/お待ちする/待ちます
知る/ご存じ/存じる/知っています
どれもビジネスシーンでは覚えておいた方がいい敬語です。用途に合わせて使えるようになっておきましょう♪
間違えがちな敬語と使い方のルール
間違った敬語は日常に潜んでいます。「これ、間違いだったの?」と思うものもあるかもしれませんよ。間違いがちな敬語と正しいルールについて学んでいきましょう。
よくある敬語の間違いをチェック
次の1~4のうち、間違っている敬語の使い方はどれでしょうか?
1.以上の内容でよろしかったでしょうか。
2.ご苦労様です。
3.お世話様です。
4.どうぞお座りください。
ちょっといじわるな質問をしました。正解は「すべて間違い」。これまで1~4の言葉使いをしたことがある、ずっとしていた、という人も多いのではないでしょうか?
それぞれの間違いを解説していきます。
1の文ですが、「よろしかった」は過去形ですが、会話の内容は現在形です。正しくは「よろしいでしょうか」を使います。
2の文の「ご苦労様」は、立場が上の人が下の人にかける言葉なので、「お疲れ様です」が正しい日本語です。
3の文の「お世話様です」は、正しくは「お世話になっております」とします。4の文の「お座りください」は、「おかけください」が正しい言葉です。
日常的に使っている言葉でも、よくよく考えればおかしなものが混ざっていることは少なくないんです。
人や会社の呼び方に注意しよう
取引先の人や顧客と会話をする場合、注意すべき単語がいくつかあります。例文を見ていきましょう。
■我が社では事務員を募集しています。
■あなたの会社は以前訪れたことがあります。
意味は通じますが、敬語としては不自然です。『我が社』ではなく『当社』もしくは『弊社』を、『あなたの会社』ではなく『御社』『貴社』を使います。
これらはビジネスシーンでよく使うので覚えておきましょう!
また、下のような言葉にも注意。
■部長の武田はいま、昼食を召し上がっています。
一見するとおかしいなところはなさそうですが、社外の人と話す場合、立てるべきは上司ではなく会話の相手の方です。そのため、ここでは上司の動作を敬語表現にする必要はありません。
こんな使い方していませんか?
学生時代のバイト経験や、中途半端に習った敬語の知識が間違いを引き起こすことがあります。次のような言葉の使い方をしていないか、チェックしてみてください。
敬語に敬語を重ねる二重敬語
日本語では、ひとつの言葉の中で同じ種類の敬語は重ねないと決まっています。二重敬語はとても丁寧な言葉に聞こえるのでつい使ってしまいがちですが、日本語としては間違いなんです。
■ご覧になられますか?
■お召し上がりになられますか?
『ご(お)~になる』と『れる・られる』の二重敬語のパターンです。違和感がなさそうに見えますが、これは二重敬語です。
■ご担当者様
■部長様
こちらもビジネスシーンでよく見る間違いです。前者は『ご(お)』と『様』の二重敬語にあたります。後者の場合、役職自体が敬称なので『様』は不要です!
相手に対するこうした呼称も、二重敬語でよくあるミスなので注意しておきたいところ。
身近な「バイト敬語」に注意!
コンビニやファミレスなどの接客業では、『バイト敬語』と呼ばれる、間違った敬語が広まっていることがよくあります。
バイト敬語はフォーマルな場では避けるべき言葉遣いですし、お客様を怒らせてしまう可能性があるので注意が必要です。
1.お弁当の方はあたためますか?
2.5,000円からお預かりします。
3.お返しが1,000円になります。
3つとも、間違い含まれるバイト敬語。その理由を解説していきます!
まずは1の文。『~の方』は本来、方角や複数ある内のどれかを指す言葉です。この場合、方角でも比較でもないため、「お弁当はあたためますか?」が正しい表現です。
2の『~から』にはいろいろな意味がありますが、この場合は準体助詞として解釈できます。その場合、『~から』は下のような意味を持ちます。
「ここからが始まりだ」(それ以降)
「負けたのは弱かったからだ」(理由)
2の文は『以降』でもなければ『理由』でもありません。「5,000円をお預かりします」の方が、日本語としては正しい意味です。
3の「お返しが1000円になります」は『なります』が問題。『~なります』は状態の変化を表す言葉で、3の場合は何かが変化して1,000円になったわけではありません。「お返しは1000円です」が正しい表現です。
敬語の例文をシーン別に紹介
ビジネスシーンでは頻繁に使う常套句があります。 仕事に使える敬語の常套句を紹介しますので、メモったりキャプチャするなどして覚えておきましょう!
会議など社内で使う敬語
気をつけたいのは使う敬語の種類や二重敬語。フォーマルな場だと言葉遣いも構えてしまいがちですが、二重敬語はかえって失礼にあたります。
■お手元の資料を拝見してください。→ご覧ください
■明日までに資料をお送りさせていただきます。→お送りいたします
一つ目の文は謙譲語の『拝見する』ではなく、尊敬語の『ご覧になる』を使うのが正しいです。二つ目の文は『お~する』と『させていただく』を重ねて使うことで、二重敬語になっています。
会議などの緊張度の高いビジネスの場では、丁寧語よりも謙譲語や尊敬語の方を使いましょう。そして、尊敬語と謙譲語がまぜこぜにならないよう、誰の動作であるかを意識することが大切ですよ。
電話や来客時に使う敬語
電話や来客に対する対応は、初めての会社とアプローチをとる場合も多く、第一印象を決める重要な関門です。先述したように、立てるべきなのは電話相手や来客なので、上司をはじめ社内の人間は下げることを意識します。
■× 上司の竹内様は本日、休みをいただいております。
■○ 竹内は本日、休暇をとっています。
会議の場と同様に、謙譲語と尊敬語の間違い、二重敬語の間違いに気をつけましょう!
お礼やお詫びをするときに使う敬語
相手にお礼を言ったり謝罪をしたりするときにも敬語を用いますが、言葉遣いが間違っていると失礼になってしまいます。 取引先の人や顧客が相手の場合、大きな損害を生んでしまうかもしれません。
そうならないように、お礼やお詫びの定型文を覚えておきましょう。謝罪する際には以下のフレーズをよく使います。
・このたびは、大変申し訳ございませんでした。
・ご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。
・大変失礼いたしました。
また、お礼の際には以下のようなフレーズが使えます。
・お礼申し上げます。
・感謝申し上げます。
・恐れ入ります。
・恐縮です。
対面で話すシーンだけでなく、メールや手紙の文面でもよく用いる言葉なので覚えておきましょう。
敬語をワンランクアップさせるコツ
ビジネス敬語をワンランクアップさせるポイントを解説します。クッション言葉と『お』『ご』の正しい使い方を覚えましょう!
クッション言葉を覚えよう
クッション言葉とは、相手に対してお願いや反論などをする際に、文章全体が柔らかくなるように加える言葉のことです。
例えば、次の文章を見てください。
■ただいま準備してまいりますので、しばらくお待ちください。
■例の件に関して、何点か確認させていただけますか?
クッション言葉を使うと、次のようになります。
■ただいま準備してまいりますので、恐れ入りますがしばらくお待ちください。
■例の件に関して、お手数ですが何点か確認させていただけますか?
クッション言葉を入れた方が、柔らかな印象を受けますよね。相手を不快にさせたり、無用のトラブルを起こしたりしないためにも、クッション言葉はぜひ覚えておきましょう!
「お」「ご」の使い方も意識しよう
『お』と『ご』をつけると丁寧になりますが、どんな言葉にもつければいいわけではありません。また、本来は『お』を付けるべき言葉に『ご』をつけないよう、法則も覚えておきましょう!
第一に、『お』と『ご』をカタカナにつけるのは一般的ではありません。『おトイレ』という言い方をすることがありますが、正しくは『お手洗い』です。『おドア』『おエレベーター』などとは言いませんよね。
また、一般的に『お』は和語に、『ご』は漢語につけるという法則があります。和語とはもともと日本にある言葉で、以下のようなものがあります。
・手紙
・花
・気持ち
・知らせ
・届け物
漢語とは中国から入ってきた言葉で、以下のようなものがあります。
・注文
・連絡
・来店
・意向
ただし、すべてのものがこの法則に当てはまるわけではありません。『野菜』や『化粧』は漢語ですが頭には『お』をつけますし、『もっとも』や『ゆっくり』は和語ですが『ご』をつけます。
例外は数こそ少ないですが、間違えないようにしたいものですね。
敬語の習得には繰り返しの練習あるのみ!
敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類があり、場面や相手の立場によって使い分ける必要があります。間違った敬語は、相手への不快感や無用なトラブルを生む心配も。
二重敬語や尊敬語・謙譲語の使い間違いは、よくあるミスなので気を付けましょう!普段から意識して敬語を使い、重要な場面でも間違えないように練習しておくことが大切です。がんばって敬語を身につけていきましょう♡