女性の上半身にフラットシューズが何足か載っている
宮田理江さん宮田理江

最近よく聞く「DtoCファッション」ってなに?寄り添い型のおしゃれ

ファッションジャーナリストとして国内外で活躍する宮田理江さんによる、おしゃれの最新事情を丁寧に解説する連載コラムです。今ファッション業界で起こっているトレンドやSDGsや社会貢献への取り組み、新しい購入体験などについて、最新情報を宮田さんがわかりやすく解説します。

更新 2021.06.07 公開日 2021.06.06

私たちにじかに商品が届く「お客様ファースト」=それがDtoC

皆さんは、洋服や靴・バッグを購入するときに、値段が気になりますか?普通はさまざまな業者を通すことにより、お客様の手元に届くまでに、いろいろなコストがかかります。

しかし、最近は違う仕組みでの提案が広がってきました。それは「ネット販売が中心で、顧客思いのブランド」というところ。これらのようなブランドを「DtoC(ディー・トゥー・シー)」と呼びます。

「DtoC」は略語で、もともとはDirect to Consumer(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)です。自前の通販サイトを使って、じかにお客様へ販売するという意味があります。ポイントは「ダイレクト(直接)」というところ。途中に問屋や店舗をはさまない点が特徴です。

食べ物でたとえると、お肉屋さんが経営するレストランや、農家が手がける野菜の直売などがわかりやすい例でしょう。よい物を直接、お安く買い手に届けるというところに「お客様ファースト」が感じられます。

こんなの欲しかった!と共感を呼ぶ「kurun tokyo(クルン トウキョウ)」

DtoCの魅力を感じさせる靴ブランドに「kurun tokyo(クルン トウキョウ)」があります。25年間、ずっと靴作りを続け、何千ものデザインの靴を作ってきた「靴専門」の会社がつくったブランドです。

靴工房から直接お客様に届けることで、中間業者をはさまないので、より適切な価格で提供することができる仕組みをとっています。靴底が平らな「フラットシューズ」だけを扱うというわかりやすさに加え、抜群の履き心地と納得の価格で、ファンを増やし続けています。

どんな服やどんなシーンにもなじむ、履き心地の良い靴を目指し、フラットシューズに特化しているのがポイント。足に優しくストレスフリーでスタイルアップしてくれる靴は、女性なら誰もが共感できるところでもあります。

熟練の職人がハンドメイドで仕上げる品質は、靴専門の強みがあるからこそ。親しみやすい価格帯が実現しているのは、自社ですべてをこなし、余計なコストがかからないDtoCならではです。

バレエシューズに代表されるフラットシューズには、デザインの選択肢が少ないという難点がありました。でも、「クルン トウキョウ」では爪先のとがったタイプやアニマル柄、あでやか色などの素材バリエーションが豊富。全200種以上のカラーバリエーションを21.5㎝~26.5㎝のサイズで展開。片足約100gの超軽量設計、フラットシューズ特有の楽な履き心地と、おしゃれ度の高さを兼ね備えています。靴選びをサポートするオンライン接客サービスも始めました。こういったきめこまやかな品ぞろえも、DtoCの魅力です。

お客様の声が商品に反映されやすい=参加型ファッション

では、どうして今、DtoCが人気を得ているのでしょう。その理由は各ブランドの立ち位置にあります。

これまでもネットショップで販売するファッションはあったのですが、ブランド側が一方的に企画した商品を販売する形式が当たり前でした。

ところが、DtoCはSNSを通して、ファンやお客様とコミュニケーションを図って、買う側のニーズや気持ちになじむ商品を提案しています。このスタンスは「(買う側に)寄り添う」と表現できるでしょう。ここが従来のブランドとの最大の違いです。

買う側の困り事を解決するというのも、DtoCブランドの強みです。

たとえば、「COHINA(コヒナ)」は150cm前後の小柄な女性向けの洋服ブランド。発起人の2人もブランド発起人も148cmと151cmの小柄女性だそうです。大手メーカーや老舗企業なども、DtoCの取り組みを進めています。大阪の老舗ニット企業、澤田も新ブランド「NETENE(ネテネ)」を立ち上げました。しなやかにボディになじむフレンドリーなニットウエアを提案しています。

ブランド側の思いやメッセージをはっきり伝えられるのは、買う側との距離感が近いDtoCならでは。作り手の発するリアルな言葉がお客様の共感を呼び、買う側からの反応は次の商品開発に生かされていきます。

買う側の気持ちに寄り添うDtoCは、納得感の高い商品に出合えるチャンスともなります。これからも広がりそうなDtoCファッションは、コンサートのオーディエンスに近い参加型のスタイル。自分好みのおしゃれが見つかりやすいうえ、信頼度が高まって、リピートしたくなるという、新たなショッピングのあり方は、作る側も買う側もハッピーになれるお買い物スタイルと言えそうです。

(画像協力)kurun TOKYO

ファッションジャーナリスト:宮田理江さん

Profile:10を超えるメディアで連載を持つファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。新聞からSNSまで多彩なメディアを通じて海外・国内コレクションのリポートや最新トレンドの紹介などを発信。次シーズンのファッション予測、着こなしテクニックの解説、おしゃれ市場の動向分析、ファッション関連ニュースの執筆、映画のファッション読み解きなどを多面的に手掛けている。著書『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(ともに学研パブリッシング刊)は、中国、台湾、タイでも翻訳発売されている。

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