したためたい感情がある
整理をしきれていない感情なんて、大なり小なり誰にでもあるような気がする。
伝えなければならなかった感情、伝えたかった感情、伝えないことにした感情、どんな感情も自分一人の中で抱え込むには、少し、もったいない。
そんな感情を、ただひたすら保管してくれる場所があるみたい。
香川県三豊市にある「漂流郵便局」に
香川県三豊市にある『漂流郵便局』という場所はご存知ですか?ここでは届先のない手紙やはがきを、その宛先不明な存在に届くまで、しばらく預かってくれるのだとか。
2020年4月時点では既に、手紙が4万通を超えたみたい。したためたい感情がある人は、漂流郵便局に手紙を送ってみませんか?
その「届先のない手紙」って?
例えば…天国にいる大切な人に
例えば、天国にいる家族や友人、恋人。
本人に直接読んでもらうことはできないし、読んでいる姿を直接見ることもできない。なぜならどこに宛てて手紙を書いたらよいか分からないから。
けれど、私たちが手紙を書くのは、感情を整理するための一つの手段になるかもしれない。
例えば…顔も名前を知らないどこかの誰かに
他に、顔も名前も知らないどこかの誰かに書いたって構わない。実在するものなのか、架空のものなのか、それだってなんだっていい。
「将来私と結婚する人へ」
「10年後私と同じ本を借りる人へ」
「幼少期に描いたキャラクターへ」
ちょっとした気持ちでも伝えたいことがあるのなら、手紙を書いてみては。
例えば…数年後の未来の自分に
1年後、10年後……はたまたずっと先の将来の自分に宛て手紙を書いたっていい。
その手紙が将来、自分の手元に届けられるわけではないけれど、覚えていれば再び漂流郵便局に向かう理由になるかも。数年後の自分は、どういう気持ちであの手紙を読めるのだろう。
例えば…もう連絡先も知らない元恋人に
昔、交際していたかつての恋人。
連絡先なんてとっくに知らなくて、どこでどう過ごしているのかなんて、もはや知る由もない。
それでも今の私を構成してくれた大切な人だったことに変わりはない。今だから言葉にできる感情を、思いつくままに文字にしてみるのも良いかもしれない。
漂流郵便局の利用スタイル
元々漂流郵便局は、2013年の瀬戸内国際芸術祭のアート作品のうちの一つだったとのこと。粟島に漂流物が多いことから着想を得たみたいです。
そんな漂流郵便局の利用方法として「手紙を送る」と「手紙を読みに行く」があります。
手紙を書いて漂流郵便局に送るだけ
手紙を書いたら漂流郵便局に送るか、直接投函するかの2パターンがあります。営業時間内は窓口に、営業時間外は入り口左側の「郵便受け」に投函することになります。
ただ、一度送った手紙を返却してもらうのは不可能なので注意してください。また、差出人の住所は不要とのこと。
[住所]
〒769-1108
香川県三豊市詫間町粟島1317-2 漂流郵便局留め
○○(いつかのどこかの誰か)様
[開館時間]
第2・第4土曜日 13:00〜16:00(不定休)
公式Twitter等で事前にご確認ください。
実際に手紙の内容を見ることもできる
手にとった手紙が自分の家族のものだったり、自分宛てのものだと思ったりしたら、手紙を持ち帰ることも可能なのだとか。
家族であることや自分宛てのものであることの証明も不要みたい。
もっと漂流郵便局を知りたい人は
もっと漂流郵便局について知りたくなった方、あるいは漂流郵便局に直接向かうことはできないけれど手紙を読んでみたいと思った方にオススメしたい本があります。
現在、漂流郵便局についての本が2冊販売されているみたいです。
漂流郵便局
¥1,320
著者/編集:久保田 沙耶
出版社:小学館
2015年に出版された第1冊目。恋人へ、10年後の孫へ、がんで急逝した夫へ、など69通の手紙が収録されています。谷川俊太郎さんから届いた手紙などもあるみたい。
漂流郵便局 お母さんへ
¥1,320
著者/編集:久保田 沙耶
出版社:小学館
2020年に出版された第2冊目。開局以来ずっと届く手紙の中で、母親に宛てられたものが収録されています。返事はなくても伝えたい母への想いを読んでいると、目頭が熱くなってきそうです。
なんだか、手紙を書きたくなった
行き先のない感情、供養しきれなかった傷心、言葉にならなかった感謝や疑問など、手紙にしたためたい事柄はきっと人の数だけある。
それらを記した手紙を、ただひたすら「漂流」させる。
確かに届かないかもしれないけれど、ひょっとするといつか届くかもしれない。