新元号、令和

2019年5月、元号が変わった。
「令和」という新元号が発表され、その典拠だという『万葉集』にも注目が集まったよう。
街はお祭りムードで、私もなんとなくそのワイワイとした楽しげな雰囲気に飲まれてみたけれど、実は『万葉集』のことはよく知らなかったりする。
高校生の時、国語の授業で習った気もするけれど、一度も進んで読んだことはないし、読もうと思ったことすらなかったな。
思い返してみると、これまでの二十数年間、私は日本の文化にあまりにも無頓着に生きてきた気がする。
海外の友人から日本の文化について聞かれても、いつもほとんど答えることができない。

なんだかそれって、もったいない気がする。
日本には美しい四季と移り変わる自然があって、昔の人々はその自然を大切に愛で、歌として詠んできたのに、その美しさに触れようとしてこなかったなんて。
令和元年、その記念すべき改元イヤーが終わってしまう前に、万葉集のことや「令和」という言葉の意味を、きちんと知っておきたい。
そうすれば、もっと美しい日本の姿に気づけるかもしれないと思うから。
いままで見えていなかった景色だって、見えるかもしれない。
「令和」はどこから、やってきたの?

新元号、「令和」の典拠は『万葉集』の梅花の歌、三十二首の序文です。
『初春の令月(れいげつ)にして 気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ 梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き 蘭は珮後(はいご)の香を薫(かお)らす』という文章の、「令月」と「風和らぎ」という部分から引用されました。

この序文は、「時は初春の令い月であり、空気は美しく、風は和やかで、梅は鏡の前の美人がおしろいで装うように花咲き、蘭は身を飾る衣に纏う香のように薫らせる。」という意味です。
令和という字や音の響きからも感じられるように、とても美しい意味の文章ですよね。
万葉集には、和歌が4500首以上収められていましたが、梅はその中でも重要な題材でした。
万葉集に、触れてみる?
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上野誠著/KADOKAWA
万葉びとの恋心や親子の情愛などを詠んだ和歌の世界に触れ、さまざまな人の気持ちに想いを馳せれば、和歌を身近に感じられそう。わかりやすい解説付きなので、万葉集をこれまで読んだことがなかった人もきっと楽しめる一冊です。
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出典 books.rakuten.co.jp
昔の人にとっての、梅の花って

現代の俳句などで「花」といえば桜を指しますが、奈良時代の和歌などで「花」といった場合には、梅のことを意味しました。
梅は、奈良時代の人々にとってとても馴染みのある花だったのです。
たくさんの人々が梅を愛し、その気持ちを歌に残してきました。
寒さに耐え、他に先駆けて美しい花を開き、芳醇な香りを漂わせる梅。
出典 perfumeoil.co.jp
紀貫之はその香りの変わらない美しさをこう表現した。
『人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににおひける』
(人の心は変わりやすいものだから、あなたのお気持ちはわからない。けれど昔なじみのこの里の、梅の花だけは昔のままの香りである。 )
梅の花にも成らましものを
万葉集には、こんな歌もあります。
「世の中は恋繁(しげ)しゑやかくしあらば梅の花にも成らましものを」
これは、「世の中は恋に苦しむことが多いなあ。それならいっそ梅の花にでもなってしまいたいものです。」という意味。
春の暖かな空気をそよぐ美しい梅の花を見て、梅の花のように儚く自由な存在になりたいと感じたのではないでしょうか。
まだ見られない梅は、香りで取り入れて

昔の人々が、「なりたい」とまで願った梅の花。その美しさではるか昔の時代からたくさんの人を魅了してきた梅の花。
そんな大昔の情景に想いを馳せていたら、なんだか梅の花に愛着が湧いてきました。
美しい梅を今から見ることはできないけれど、香りでならばすぐに梅の清らかさを感じられるはずです。
赤い梅と白い梅の香りを、日常に
CHAYAcosmeオードトワレ 紅い梅の香り
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友禅工芸 すずらん
やさしく上品な梅の香りがほのかに漂うオードトワレ。レトロでポップなパッケージもお洒落です。
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春の訪れを感じる白梅の香りのミニ寸お線香。ほんのりと感じる甘酸っぱさが懐かしい気持ちを呼び起こします。
令和カラーでメイク、も話題に

新しい元号が発表され注目が集まったのは『万葉集』だけではありません。
新しい「令和」の時代を迎える国民の慶びを込め、「令和 慶祝カラー」が発表され、そのカラーを取り入れることも話題となりました。
令和カラーは、メイクなどにも取り入れやすい、淡く可愛らしい色合い。
令和元年が終わってしまう前に、令和カラーのメイクにも挑戦してみましょう。
例えば、梅色の唇
『THREE(スリー)』のデアリングリィデミュアリップスティックはなめらかな質感と美しい発色が魅力のリップカラー。
06 FREEDOM REIGNSは、紫がかった淡い紅色である紅梅色に近い、紫を感じるピンク色です。
例えば、菫色の目元
『PAUL & JOE BEAUTE(ポールアンドジョーボーテ)』のアイカラー トリオは捨て色なしの3色がセットになったアイカラーパレット。
03 花の庭はその名の通り鮮やかに咲く花々のように心躍るカラー。
淡いパープルが菫を連想させるだけでなく、ピンクは桜、緑はよもぎを連想させ、日本の自然を纏うようなメイクが完成しそうです。
例えば、桜色の頬
『Les Merveilleuses LADUREE(レ・メルヴェイユーズ ラデュレ)』のプレスト チークカラー Nはその見た目にもときめく、乙女心をくすぐるチークカラー。
09は女性らしい柔らかなカラーで、肌に血色感を与えてくれます。桜の花が咲くようにパッと色づく頬でメイクを仕上げてみましょう。
新しい時代、新しい出会い

「令和」という新しい時代にならなければ、私は一生、『万葉集』に触れたいと思うことはなかったかもしれない。
新しい時代は、新しい出会いももたらしてくれたんだ、と嬉しくなる。
自分の世界が広がることは、新しい時代の訪れくらいわくわくするってことに、気づけて良かった。